渡辺喜美氏 「政治家はカネと女の2つは諦めろ」と父の教え

NEWSポストセブン / 2014年4月15日 7時0分

 みんなの党の渡辺喜美代表が8億円借入金問題の責任をとって代表を辞任した。

 渡辺は第1次安倍晋三政権以来、政治とカネの問題を含めて改革路線を唱え、私も基本的に支持してきた。それだけに今回は驚き、渡辺本人の意見を聞こうとインタビューを申し込んだが、残念ながら応じてもらえなかった。

 したがって、事実関係についてはマスコミ報道以上に知る立場にない。それを前提に問題を考えてみる。まず、借入金の違法性についてだ。

 ある弁護士によれば、借金を自分の選挙に使っていれば公職選挙法上の問題が生じる可能性がある。だが、政治活動一般に使っていたのであれば、それが個人の活動であれ党であれ報告義務はなく、違法性は問えないという。

 一般市民の感覚で言うと「そんなばかな」と思われるかもしれないが、先の弁護士は「だから政治資金規正法がザル法と言われている。たしかにおかしいが、それは法律の問題であって渡辺氏の問題ではない」と解説した。

 それでも釈然としない点は残る。もっとも首を傾げざるをえないのは、辞任会見で渡辺が「吉田嘉明DHC会長に返済した」と説明した残債5億5000万円の原資のうち「5億円弱は代表の夫人名義の口座で管理していた」という点である。

 夫婦間であっても資金が移動していれば、贈与になる可能性がある。まして金額は億単位だ。ずばり言えば、今回の騒ぎが起きていなければ、借金の相当部分は事実上「夫人のカネ」になっていたのではないか。

 夫人の存在はこれまでも党運営に大きく影を落としていた。たとえば、渡辺と袂を分かった江田憲司・結いの党代表は「最初の行き違いは、私たち夫婦が吉田夫妻と会食したのを渡辺夫人が不快に思ったことがきっかけだった」と私に語っている。

 私は渡辺夫妻のプライバシーにまったく興味はない。ただ公党である以上、代表夫人といえども党の運営に過剰に介入するのはどうかと心配し、渡辺に直接、懸念を伝えたこともある。そこへ「夫人の口座」である。いったい、どうなっているのか。

 かつて渡辺は言っていた。「父が教えてくれた。政治家はカネと女と権力の3つを求めてはいけない。政治家は権力を目指すのだから、あとの2つはあきらめろ、と」

 実際、私が知る渡辺はそうだった。夜、若い女性記者と1対1の取材を受けるとき、帰宅途中の私に電話してきて「悪いけど同席してくれ」と頼まれたこともある。

 カネについても、先代から長く仕えた元秘書は「党の政治資金と自分のカネの区別は徹底していた。夫人同伴で地方に応援に行ったときも『今夜のホテル代は自分で払う』と言って党に払わせなかった」と打ち明けた。

 そんな渡辺が本来、だれよりも身ぎれいで慎重であったはずのカネの問題でつまずいた。その陰に夫人の存在がチラついているのであれば、私はあえて言いたい。

 代表辞任で幕引きとするのではなく、党と自らの政治活動について徹底的にガバナンスを見直すべきだ。そうでなければ、いくら公務員制度改革や政治のガバナンス強化を力説してみても、国民はシラケてしまう。

 先代の故・渡辺美智雄副総理は色紙によく「大道無門」と書いた、という。「大きな道に門はない」「絶対自由」という意味だそうだ。掲げた政策は正しい。ここは苦しくとも原点に戻って「大道」を歩いてほしい。

(文中敬称略)

文■長谷川幸洋:東京新聞・中日新聞論説副主幹。1953年生まれ。ジョンズ・ホプキンス大学大学院卒。政府の規制改革会議委員。近著に『2020年新聞は生き残れるか』(講談社)。

※週刊ポスト2014年4月25日号

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