昭和レトロの雰囲気にコンビニ感覚で立ち寄れる神田の角打ち

NEWSポストセブン / 2014年4月29日 16時0分

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昭和レトロな雰囲気の角打ちに、リクエストのサザンが流れる

 JR神田駅を背にして出世不動通りの右側の歩道を歩いていくと、軒先にビールケースをうず高く積んだ店が現れる。

 ここが角打ちのできる『藤田酒店』。店先のそんな風景にたどり着くだけで、酒をこよなく愛するサラリーマンたちは、何かに柔らかく包まれるような心地よさを感じるのだという。

 ガラス引き戸越しに店内に目をやれば、カウンターテーブルを囲んだ男たちが、すべてから開放されたようないい笑顔で、酒や会話を楽しんでいるのが見える。

「酒屋としては80年を超える歴史があるんですが、角打ちをできるようにしたのは2010年。現在の雰囲気に改装したのが、去年の2月ですね。うちは酒屋なのだという姿勢を崩したくなくて、昔から使っている木製の日本酒棚、洋酒棚で店内を囲みました。これが、昭和レトロで落ち着くといって、歓迎してくれているお客さんが意外に多いんです」(3代目・坪田維修<まさのぶ>さん・51歳)

 なるほど、“東洋の魔女”や“鬼に金棒小野に鉄棒”で沸いた東京五輪のころ、そして昭和40年代の酒屋さんは、こんな感じだったかもしれない。

 しかし、常連客の心はもうひとつ違うところを見ていた。

「ここの主人夫婦って、気を使っていない振りをしていて、実は気を使ってくれてるんだよね。これって客からするとうれしいし、最高の肴ですよ。同じ酒を飲むなら、こういう店でしょ」(35歳、自営業)

「ただいまと言って入ってくるから、お帰りって迎えてくれないかなとか、カップでいいから焼きそば食べたいとか、かなり好き勝手なことをごり押ししているんだけどね。嫌な顔ひとつしないで、気軽に受け入れてくれるんだよ。もう2年通ってるけど、裏表がない夫婦だね」(60代直前、建設業)

 さらに言えば、BGMの選曲も客の要望最優先。この日、店のムードを作っていたサザンの名曲のメドレーは、40代サラリーマングループからのリクエストだったが、驚くほどに角打ちに溶け込んでいた。

 なるほど。酒よりも維修さんと奥さんの康子さん、この二人がすでに店先からみんなをやさしく包んでくれていたというわけだ。

 角打ちの店といえば、たくさんの手作りメニューを用意している店も増えてきたが、こちらのつまみは缶詰と乾き物が主役。

「うちは居酒屋じゃないですから。でも、ちゃんと器に盛ったり、温めたりして食べてもらっているんですけどね。そのかわり、缶詰や乾き物の種類は意識してたくさん揃えています。若い人はコンビーフ缶の開け方を知らなくて、そこからみんなでわいわい始まったり、次回はこれを開けて食べるぞなんて言ってくれる人も多いですし」(維修さん)

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