東大を優勝させよう会会長「東大野球部は自分の人生そのもの」

NEWSポストセブン / 2014年5月21日 11時0分

 もはや今季の全敗は既定路線。来秋にはいよいよ100連敗も見えてくる東京大学野球部。だが、そんな状況が東大への関心を高めたのか、試合ごとに神宮球場の東大応援席は熱気を増す。そこには応援団やチアリーダーに加え、一般の人々も多い。彼らはなぜ、負け続ける東大に寄り添い、東大を応援するのだろうか。

「東大を優勝させよう会」(略称・東優会)という団体がある。1974年(昭和49年)2月、熱狂的なファンによって設立されたファンクラブだ。東大OBでなくても入会でき、会員数は現在250名ほど。シャレで結成されたわけではなく、会の名称も大真面目だ。

 結成前年の1973年、いずれも最下位に終わったが、東大は春に3勝、秋に4勝を挙げた。接戦も多く、こういう試合を続けていたらいつか優勝できる、という思いから結成されたのだ。

 活動内容といえば、『淡青ふぁん』(淡青は東大のスクールカラー)という会報を発行する、選手と一緒に忘年会を開き、選手を慰労し励ますといったもの。勝ち点を挙げたらビールを差し入れる習慣もあるが、残念ながら、それは長年実現していない。ちなみに、東大が優勝したら解散する規定だ。

 同会会長の冷泉公裕氏(俳優、67)は、役者の卵として神宮球場でアルバイトしていた19歳のときから応援する筋金入りのファンで、試合がある時間帯には極力仕事を入れず、全試合を応援する。

「100連敗しようが神宮に来る。東大野球部は自分の人生そのものだから」だという。その冷泉氏が東大ファンの気持ちをこう語る。

「予定調和を裏切る劇的な展開がスポーツの魅力ですが、それをもっとも味わわせてくれるのが東大野球部です。いつもは打てない、守れないのに、たまに上手くいったときの喜びは常勝チームを応援している人には得られないでしょう。

 まるで綱渡りの連続のようにスレスレのところで相手の攻撃をかわし続け、8回まで1点リードという状況だったときの心臓のドキドキ感はたまりません。アドレナリンの出方が半端じゃないんです」

 勝負から離れたところで感動を覚えることもある。

 たとえば、2対14と大敗した今春の対立教第2戦。1対6と大きくリードされて迎えた7回表の東大の攻撃。ランナーを3塁に置いたチャンスに生田優人という3年生が代打で登場した。

 実は彼は六大学で試合に出るのが初めてだっただけでなく、ベンチ入りもその試合が初だった。東大応援席のファンの多くはそのことを知っていた。だから、その生田がタイムリーヒットを放ったとき、東大が得点したことだけでなく、生田が起こした奇跡にも大きな拍手を送った。

「以前、なんと5浪もして東大に入ったピッチャーがいました。そして、コツコツ練習し、4年秋のシーズンに初めてベンチ入りし、ある試合で1イニングだけ登板して0点に抑えました。

 その彼がベンチに戻ってくるとき、まるで優勝したみたいに東大の選手たちがベンチから『ウワーッ』と飛び出して祝福したんです。そのシーンを見ていて、大きな勇気をもらった気分になりました」(前出・冷泉氏)

 冷泉氏は、これまで「東大を応援するのはもうやめよう」と思ったことが何度もあるという。だが、人生にはうまくいかないこともある。しかし、それでも一生懸命生きていく──東大野球部は無言のうちにそんなことを語っているように見える。だから応援はやめられない。

※週刊ポスト2014年5月30日号

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