おやじの背中 ボクサー満島ひかりの運動神経に女性作家驚愕

NEWSポストセブン / 2014年8月3日 16時0分

 近年のドラマファンは目が肥える一方だ。録画視聴、ネット掲示板、あらゆる情報が交錯するなかで評価を下す。制作側も小手先では誤魔化せなくなりつつある。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が今回取り上げるのは、TBSの大型企画だ。

 * * *
 視聴率が伸び悩んでいる夏ドラマ。不作などと言われていますが、録画での視聴も増えている今。「視聴者離れ」と判断するのは早計でしょう。むしろ、ドラマの世界の中にいろいろなチャレンジが生まれてきていることに注目したい。例えば、日曜劇場『おやじの背中』(TBS午後9時)。

 これは見物です。なぜなら、毎回、「比較視聴」を存分に楽しむことができるから。全10回が、1話完結のオムニバス形式。テーマ「おやじの背中」のみ共通する以外は、脚本家・出演者・演出家、すべて変わっていく。

 すでに3話まで放映されましたが、役者陣も豪華絢爛。「おやじ」の役に田村正和、役所広司、西田敏行が登場。それぞれ、まったく違う「おやじ像」を見せてくれました。脚本家のラインナップは池端俊策、井上由美子、岡田恵和、鎌田敏夫、木皿泉、倉本聰、坂元裕二、橋部敦子、三谷幸喜、山田太一。10名の書き手の世界観を見比べることができるのです。その意味で、ユニークなエンタテインメント。

 すでに放送された3本のドラマをちょっと比較してみると……。

 役者から新しい身体力を引き出した、という意味で最もスリリングだったのが、第2話の「ウエディング・マッチ」(脚本・坂元裕二)。役所広司と満島ひかりの父娘は、元プロボクサーと、そのスパルタ教育を受けてオリンピックを目指してきた娘。驚愕だったのは満島ひかりの身体感覚、運動神経です。

 ボクサー役はヘタにマネをすると、腕だけをブンブン振り回すスタイルになる。上半身と下半身の動きがバラバラになり、いかにも素人くさいボクサーになる。あまりにウソっぽいスタイルはそれだけでドラマに感情移入することの妨げになる。しかし、満島ひかりは違いました。下半身が安定し腰が入り、構えがさまになっている。繰り出すパンチに体重がちゃんと乗っている。役者の「知られざる身体力」がドラマの中で鮮やかに浮き彫りになりました。発見の楽しさがありました。

 一方、「未知の老人力」を発見できたのが第3話の「なごり雪」。さすが、老脚本家・倉本聰にしか描けないドラマ世界。長年生きてきた経験の厚みがディテイルの描写となり、しっかりとドラマの中に書き込まれ、それが説得力につながっていました。

  • 前のページ
    • 1
    • 2
  • 次のページ
NEWSポストセブン

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング