【書評】在日アメリカ総領事「夫夫」が語るゲイカップル生活

NEWSポストセブン / 2014年8月23日 16時0分

【書評】『夫夫円満』/パトリック・ジョセフ・リネハン、 エマーソン・ルイス・ソアレス・カネグスケ著/東洋経済新報社/本体1500円+税

Patric Joseph Linehan/1953年フロリダ州生まれ。2011年8月から大阪・神戸アメリカ総領事館総領事。 Emerson Luis Soares Kanegusuke/1972年サンパウロ生まれ。日系3世。元ブラジル空軍航空管制官。  

【評者】鈴木洋史(ノンフィクションライター)

 著者の2人はゲイのカップルで、2007年、同性婚を認めるカナダで結婚し、互いを「夫」と呼ぶ。しかも、公的な存在、“見える存在”だ。一方のパトリック・ジョセフ・リネハン氏はアメリカの外交官で、2011年8月から在大阪・神戸アメリカ総領事館総領事の職にあり、もうひとりのブラジル出身の日系3世エマーソン・ルイス・ソアレス・カネグスケ氏は、日本の外務省から配偶者ビザを発行された同性婚パートナー第1号だ。

 総領事館のHPには、2人が性的指向を理由にイジメを受ける若者を励ますビデオメッセージが公開され、リネハン氏が参加する公式行事にはカネグスケ氏が配偶者として同行する。大阪には「関西日米婦人会」という日米間の交流団体があり、代々総領事夫人が会長に就き、現在、カネグスケ氏がその立場にある。

 本書はその2人がこれまでの歩みを語った本だが、印象的なことがいくつかある。ひとつはゲイ差別の激しさだ。

 リネハン氏が生まれた1953年、アメリカ政府が、同性愛者であるか、そうと疑われるという理由で5000人以上の職員を解雇したというように、1950年代、1960年代のアメリカでは激しい“ゲイパージ”が行なわれた。氏が国務省に入省した1984年でも、上司のひとりは〈国務省に“ホモ”の居場所はない。もし君たちが同性愛者なら出て行きたまえ!〉と言ったという。

 一方、ブラジルもカトリックの影響で“アンチゲイ”の風潮が強く、カネグスケ氏がブラジル空軍のアカデミーに入った1980年代後半、〈同性愛は犯罪〉扱いで、〈発覚すれば、処罰を受け、放校〉となった。ブラジルでは今も、ゲイは暴力の対象だという。

 2人の出会いは2002年、新宿2丁目のゲイバーだった。そのときのことをリネハン氏は、〈彼が笑った顔に目が釘付けになりました〉〈生涯の伴侶となるべき人を見つけた〉と振り返る。そうした記述に最初は面食らい、苦笑したが、2人の愛情についての、あけすけで率直な語りの連続に次第に微笑ましさを感じるようになる。

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