滝田栄の大河ドラマの琵琶法師役 最終回は自分で琵琶弾いた

NEWSポストセブン / 2014年9月15日 16時0分

 役者歴40年に及ぶ俳優・滝田栄が、大河ドラマ、朝の連続テレビ小説と続けて出演したころについて語った。映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづる連載『役者は言葉でてきている』からお届けする。

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 1979年、滝田栄は鎌倉幕府草創期を描いたNHK大河ドラマ『草燃える』に出演する。この時、滝田が演じた伊東祐之は脚本家の中島丈博が創作した人物で、御家人から転落して人生の裏街道を歩き抜き、最後は目を抉(えぐ)られて琵琶法師になるという、時代の闇を象徴する役柄だった。

「最初から中島丈博さんに『最終回の最後のシーンは出来ている。主役の権力者たちを前に平家物語を吟じてほしい。目をつぶされても、人間として心の目を開く。僕はそこを描きたい。だから汚れ果ててほしい』と言われていました。劇団四季で子ども向けミュージカルを我慢しながら演じていた時でしたから、大人の芝居ができるのが嬉しかったですね。汚れも綺麗もへったくれもない。最初からこれは面白いと思って、燃えました。

 最終回の琵琶は自分で弾きました。中島さんからお話をうかがった段階でその構想はあったので『吹き替えで』と提案されても『これがやりたくて演じるんだから、絶対にやらせてほしい』って頼んだんです。それで、鶴田錦史さんという芸大の先生の所に週一で通って、目をつぶったまま『平家物語』を弾けるようになりました。で、吟じてみたら、実にいい音なんです。怨念とか恨みつらみを全て飲み込んで、真理を述べていく。

 これを権力を握って有頂天になっている北条政子と義時の前で『驕れる者は久しからず……お前たちのことだ!』とやる訳ですからね。ドラマって面白いな、とゾクゾクしました。

 やっぱり、いい顔だけ撮られて、実際の動きは他の人がやるというのは、つまらないんです。できることは、できるだけ自分でやりたいと思っています」

 翌年は朝の連続テレビ小説『なっちゃんの写真館』に出演。今度は一転して、ヒロインの夫・亮平を爽やかに演じている。

「伊東祐之は顔を斬られヒゲを伸ばし、ボロボロでした。それを観た別のプロデューサーに『今度は顔を綺麗にしてみませんか』と言われまして。

 ただ、最初は『こんなのでいいのかな』みたいな感じで演じていました。そうしたら演出家が本当に表情や動きのいい時にワンカットごとに来てくれて、『凄く綺麗に映っている』『今のいいよ。今の気持ちで演じて』と言ってくれるんです。『こういう風に映ると美しい』とか『端正に見える』とか、そういう言い方ってそれまでされたことがありませんでした。
 
 激しいとか、怒っているとか、そういう激情の極みみたいなものを追いかけすぎていたものですから。『程よい』とはどういうことなのか、教えてもらいましたね。

 劇中で二人の新居を持って、庭の井戸水を手ですくって飲んで『いい水だ』という場面があるのですが。これが本当においしい水に思えたんです。僕はそんな嬉しい気持ちで言っただけなのですが、演出家からは『それだよ、滝田君。その顔を何度も見せてほしい』と。それで、常に気持ちのいい空気、風を感じることを意識して演じることにしました。人生の両極端をあの二年で演じたと思いましたね」

●春日太一(かすが・たいち)/1977年、東京都生まれ。映画史・時代劇研究家。著書に『天才 勝新太郎』(文春新書)、『仲代達矢が語る日本映画黄金時代』(PHP新書)、『あかんやつら~東映京都撮影所血風録』(文芸春秋刊)ほか。

※週刊ポスト2014年9月19・26日号

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