中島京子さん 江戸初期に実在の女大名の波瀾万丈一代記描く

NEWSポストセブン / 2014年10月6日 7時0分

 江戸初期の東北に実在した、女大名の波瀾万丈一代記『かたづの!』(集英社)を上梓した中島京子さん(50才)。初の歴史小説を書くきっかけとなったのは、江戸時代唯一の女大名・清心尼との出会いだった。

「大学時代の恩師がくれた学会誌を何の気なしにめくっていたら、『女の大名としては遠野に清心尼がいた』という一文が目に留まったんです。びっくりしましたね。戦国からまだ間もない時代、女性は男性を陰で支える存在だったはず。珍しいと思って調べていくと、どうもすごいリーダーだったらしい。昔と今では価値観が違うので、歴史上の人物にはどうしても距離を感じることが多いのですが、彼女のことは理解できる。そう思えたことが、書く原動力になりました」(中島さん・以下「」内同)

 女大名の信念と知性を象徴するのが、「戦でいちばんたいせつなことは、やらないこと」という台詞。

「とても地に足のついた見方、考え方をする人だったと思います。逆境に立たされても諦めずに、どうすれば家族や家臣、領地や領民を守れるか、考え抜く。例えば叔父の謀略によって八戸から遠野へ移封を命じられたことは、彼女にとっても家臣にとっても屈辱だったはず。潔く従ったのは、彼女らしい、現実主義的な決断だったと思います」

 しかし物語の語り部は、清心尼その人ではない。人間ですらなく、なんと一本のカモシカのツノだ。

「夫を亡くして、子を亡くして、父祖の地を追われる…清心尼の人生は困難の連続です。そのまま書くとどうしても重い話、暗い話になってしまう。書き始めて苦戦しているとき、遠野に片角様という神様が祀られていたことを知りました。そのご神体が、カモシカのツノなんです。片角様だったら、清心尼の壮絶な人生を、シリアスになりすぎずに語ってくれるんじゃないかと思って」

 清心尼に一目惚れして遠野まで追いかけてくる河童や、河童界の女親分も、物語にユーモアを添える。

「八戸や遠野に伝わるさまざまな伝説を、自分なりにアレンジするのは楽しかったですね。だから、歴史小説というより歴史ファンタジー、自分ではそう思っています」

 女大名の一代記は、女性活躍政策にも示唆を与えてくれそうだが、

「例えば、清心尼のお母さんもすごく頭のいい人だけど、タイプは全然違うんです。母娘関係を描きながら改めて思ったのは、女性の賢さも、女性の幸せも、決して1つじゃないということ。女性全員が優れたリーダーになるわけではない。数年前から温めていた題材なので、現政権の政策を意識して書いたわけではないのですが。エリートを優遇するよりも、働くお母さんの家事・育児・介護負担を減らし、女性の貧困に手を差し伸べる、地に足のついた政策を望みます」

※女性セブン2014年7月10日号

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