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挑戦の気風生むマツダの現場 180か所以上測定して失敗大賞

NEWSポストセブン / 2014年10月21日 16時0分

 最終的に、大変な苦労をしてまとめ上げた測定結果を一覧表にして上司に報告したのですが、“こんなに膨大で複雑な数値では、運用や教育ができない”という結論に。しかし、これだけの挑戦は『失敗大賞』に値する――という上司の推薦で、工場長賞=失敗大賞を受賞することができました」(高岡さん)

 そうはいっても技術者にとっては、失敗を讃えられるのは気恥ずかしい。また、あくまで“成功に向けての失敗”という意識から、高岡さんたちは大賞受賞をバネに180か所以上の集計数値を再活用。数値に沿って検査の手順を動画撮影し、わかりやすいマニュアルの作成を進め、検査方法の共有や教育に役立てている。

 この失敗大賞を設けた背景には、どういういきさつがあったのか? マツダ執行役員 本社工場長の圓山雅俊さんはこう語る。

「数年前、私が海外工場から本社工場に戻ってきたとき、何となく委縮しがちな社員たちの様子を感じました。工場やラインでは、高い技術水準を維持しつつ、安全でスムーズな作業体制を第一に求められることが多いため、ついほめるより叱ることのほうが多くなりがちです。その蓄積が、工場の現場において、マツダのDNAである“あくなき挑戦”の気風を薄れさせていると感じ、すぐにでも何かやらなければ! と思ったことが『失敗大賞』のスタートです」(圓山工場長)

 そして部長賞を受賞した失敗、“車体ラインのパーツ供給方法の改善”。

 車体組立ラインでは、各取り付けパーツをコンテナに入れて、牽引台車でそれぞれの取り付け場所に定期的に配送する。牽引台車から作業台に重いコンテナを移動するのは、体力を使うと共に危険も伴う。そこで、台車にテコの原理を応用した器具を新たに取り付け、コンテナの入れ替え時の作業ロスと安全性の改善を目指した。

 その結果、19kgかかっていたコンテナ入れ替え作業者の負荷は15.5kgまで減少させることができたが、女性による作業も可能にするために目標としていた5.6kgには遠く及ばなかったため、見事(?)に失敗として部長賞を受賞。こちらも失敗をバネとして工夫を重ね、着々と目標へ近づいているという。

「失敗大賞だけでは……という現場の声に応えて、成功を讃える『挑戦大賞』も設定しましたが、私にとって金メダルは『失敗大賞』で、『挑戦大賞』は銀メダル。失敗にこそ胸を張ってほしい。なぜなら失敗はあくまでチャレンジングな途中経過であり、失敗なくして成功はないと信じているからです。開発、生産技術、物流という枠を超えて、ニーズに先回りして提案できる工場の現場力を、失敗と挑戦の積み重ねからさらに大きくしていってほしいと思っています」(圓山工場長)

 近年は成果主義の下に、結果を出す=成功しなければ、認められない風潮が強い。それによって“失敗を許さない”雰囲気が生まれ、手堅い発想しかできずに硬直化してしまうケースもあるだろう。しかし、成果を求めるプロセスとして失敗を前向きに評価し、チャレンジを促進することは、より大きな成功を生み出す可能性を広げ、働く人のモチベーションを高める要素になるのではないだろうか。

「挑戦は、最初に想定したとおりにうまくいくとは限らないし、うまくいかないことのほうが多い。でも、たとえ失敗だったとしても、作ったものが評価されることでモチベーションは大きくなります。感覚的な世界が当たり前と思われて、標準化や数値化はできないとあきらめていた匠の技を、私たちの力でしっかりと継承していきたいですね」(高岡さん)

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