フジ月9『恋仲』 視聴率1桁発進の理由は「古めかしさ」か

NEWSポストセブン / 2015年7月25日 16時0分

 一方、今回の『恋仲』は、「純愛」エピソードの比重がとても高そうなドラマ。恋愛をめぐる人間関係を抽出しストーリーを構成していくスタイル。以前ならばそれも成立したのかもしれないが、すでにこのスタイルは限界を迎えているのかも。

 考えてみれば、人が社会的な存在である以上、周囲の人々や時代・社会的状況、暮らす土地の文化や慣習といったこととの関係はいやでも生じる。そうした要素をドラマの中で生かせなければ、「昔こういう恋愛物ってあったよね」という古めかしさばかりが目立ってしまう。

●オリジナル

 原作は無く、脚本家の純粋な書き下ろし。フジ・大多亮常務は「昨今のテレビは、オリジナルでラブストーリーをやれる枠がほとんどない」「月9は基本はオリジナルラブストーリーをやり続けなければいけないという思いで『恋仲』をやる」(日刊スポーツ同)と、堂々とオリジナル志向を語っていた。

 そこまで力が入っているのだからどんな斬新さ、独自性を見せてくれるのか期待したが……幼なじみ同士、好きだけれど相手への思いが口にできない、すれ違い。三角関係。父親の事業が倒産し、暴力団が借金返せと押しかけて、夜逃げ。なんとベタな展開。なんという既視感。なんと見飽きたストーリー。そんじょそこらにころがっていそうな「エピソード」のパッチワーク。オリジナルの力とはこういうことを指すのかと、疑問を感じた人も多いのでは。

●旬の俳優

 福士蒼汰と本田翼。たしかに、旬な人。でも、演技力を見ればまだまだ。数秒なら人目を惹いても、真正面からたくさんのセリフを語りつつ感情を表現するとなると、ぎこちなさばかり目立ってしまう。そんな二人を揃って主役にしたキャスティング。無理はなかったのか。「旬」はいいけれど、旬をどのように戦略的に使うのか、工夫のしどころでは。

 今回、敢えて30代の若手プロデューサー、脚本家らを抜てきしたと聞いて改めて驚かされた。ずいぶん古風なドラマだなぁ、と感じつつ見たから。

「未来に向かって球を投げる姿勢は評価できる。オリジナルをやるという気概を持ってやってくれている」と、亀山社長は制作現場を誉めたそうだが(2015年5月29日「スポニチアネックス」)ドラマが始まる前に制作陣を「評価できる」とか会見の場で語ってしまうあたりに、『恋仲』が古めかしい理由がかいま見えるのかも。

 スマホ、SNSが浸透し、1秒前の心の動きまでが「見える化」されてしまう時代。思い立てばすぐに連絡が取れ、昔のような「すれ違い」「障壁」は生まれにくく、相手に対する「妄想」すら膨らます時間を奪われた若者たち。恋愛はドラマチックに盛り上がりにくい時代。そんな中でピュアな恋愛をどう描くのか。どう扱うのか。

「原点回帰」と思考停止するのではなく、「未来に向かって球を投げる」ためにとことん時代を見つめアイディアをひねる必要がありそう。

 たとえば前クールで高評価を得ていた『天皇の料理番』は、過去の歴史を描いたドラマでありつつも、たしかに「愛とは何か」を描き出していた。「恋」「愛」だけを抽出して描こう、という無理を「止める」ところから、現代の「恋愛ドラマ」が始まる--そう言えるのかもしれない。でもまだスタートしたばかり。今後の推移を見守りたい。

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