憲法学者の小林節氏 春画がわいせつに当らない法的根拠語る

NEWSポストセブン / 2015年10月21日 16時0分

 大英博物館が日本の「春画」の展覧会を行ない、大反響となった。しかし、本家である日本ではこれまでタブー視する傾向が強かった。そうした中で、今年は日本初となる春画展が「永青文庫」にて開催された。
 
 春画への風当たりが弱まったかと見る向きもあった中、カラーグラビアページで春画を掲載した『週刊文春』(10月8日号)について、発行元の文藝春秋が、「編集上の配慮を欠いた点があり、読者の皆様の信頼を裏切ることになった」として突如、「編集長の3か月休養」を発表した。

 果たして春画は芸術かわいせつか。この問題について議論すべく、憲法学者の小林節氏に意見を求めた。

 * * *
 わいせつは刑法で規定されているものですが、その判断基準は、憲法の「表現の自由」に関わってくる。春画がわいせつか否かについては「表現の自由の限界例」と位置付けられます。

 ここでいう限界とは、「公共の福祉」に反する場合と、「権利の濫用」になる場合です。公共の福祉とは、公共の利益であり、この場合は「最小限度の性道徳の維持」。権利の濫用とは、他者の迷惑になることで、例えば青少年に有害になる場合と考えればよいでしょう。

 春画が法的にわいせつに該当するか否か。日本のわいせつに関する法律は極めて曖昧ですが、わいせつか否かの判断については、いくつかの考慮要件があります。

 例えば「ストーリー性」。ストーリー全体の中で必然性があれば、エロ表現は認められるというもの。ずっとエロだと必然性がないと考えられます。また、「芸術性」があれば、わいせつではないと判断されることもあります。

 ただ、芸術性をどう判断するか。作者が「私は芸術家だ」といえば、その作品は芸術作品になるのか、その人が芸術家か否かを誰がどう判断するのか。さらに「細密性」の問題もあります。露骨に性器を表現するとわいせつになるが、そうでなければ問題にならないというものです。

 では、春画はわいせつか否か。春画の特徴として、性器を大きく描いている。この点は露骨であり、エロを強調していると考えることもできます。

 その一方、デフォルメしていることでリアリティがなくなっている。また、春画は絵ですから、細密性もない。さらに今では額に入れて展示もされているので、芸術作品といっても構わないでしょう。

 何より今では、春画はあちこちで見ることができる。出版物も多数ある。ということは、社会通念上、春画は違法扱いされていない。よって、春画はすでにわいせつではない。そのように考えて問題はありません。

 春画を雑誌に掲載することについては、見たくないものを見せられたとか、子供が見たらどうするかという指摘もある。が、今の世の中は、自由で民主的な社会です。価値観の違う人たちが、お互いに譲り合いながら暮らすのが当たり前です。

 もちろん、強制的に春画を見せるのは認められませんが、雑誌に春画を載せるということは、閉じた冊子に掲載しているだけだから、嫌な人は買わなければいい。また、そのページを見なければいいのです。

※週刊ポスト2015年10月30日号

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング