サポ終了のAIBO「修理工房」を運営するソニーOBの心意気

NEWSポストセブン / 2016年5月7日 7時0分

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一体一体に飼い主の心が宿っている 提供/ア・ファン

 日の丸家電メーカー最後の隆盛期といえる1990年代後半、ユニークな商品が世に送り出された。犬型ロボットAIBO。およそ実用的な商品と思えなかったAIBOは、しかし登場から20年近く経ても人々に愛され続けている。ノンフィクションライター、山川徹氏がレポートする。

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“治療”を終えた「AIBO」は頭を起こしてきょろきょろとあたりを見渡したあと、四肢をゆっくりと動かして立ち上がった。

「ほい! ボール。キックするかい?」

 AIBOの修理を手がける「ア・ファン 匠工房」の乗松伸幸社長はAIBOの前にカラーボールを転がした。しかし当てが外れて、ボールに近寄るだけでキックしようとしない。

「なんだよ、期待させやがって……」と乗松さんは苦笑いする。

「でも、そこがAIBOの魅力。ほかのロボットは言われたことをやるだけ。いわば、主従関係なんです。けれどAIBOは違う。言うことを聞く日もあれば、聞かないときもある。突然新しい言葉を話したり、ある日初めての動きをしたりする。そんなところが受け入れられたんでしょうね」

 動きは機械的でありながら、仕草は動物的。実際に動く姿を見るまで、ただのおもちゃだろうとバカにしていたが、素直に面白いと思った。ロボットではなく「家族」としてAIBOを愛でる人たちの気持ちの一端を見た気がした。

「ソニー製ではない、ソニー生まれである」そんなキャッチコピーとともに犬型ロボットAIBOが登場したのは1999年。定価は25万円。にもかかわらず発売20分後には、3000体が完売。以来、モデルチェンジを繰り返しながら2006年の生産中止まで全世界で15万体が販売された。

 そして2014年3月、ソニーは修理サポート「AIBOクリニック」を閉鎖。途方に暮れたのは、我が子の治療を求めるユーザー、いや、飼い主である。行き場のない大量のAIBO難民が生まれた。

 2013年、初めて「ア・ファン」に治療の依頼が舞い込んだ。依頼主は介護施設に入所する高齢女性。「AIBOクリニック」からは「直せない」と断られたが、10年以上連れ添ったAIBOと一緒に入所したいという。

 もともと「ア・ファン」は「人が作った物は必ず直せる」という考えのもと、2011年にソニーOBの乗松さんがエンジニアらとともに立ち上げた。サポートが終了したオーディオ機器をはじめとする電化製品の修理を請け負ってきたが、AIBOは想定外だった。

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