「ラーメン二郎」の行列から、日本が実は良い国だとわかる

NEWSポストセブン / 2017年2月18日 7時0分

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ジロリアンは熱狂的

 欧米の経済誌や外交誌が、相次いで「日本の豊かさ」に注目する論文を掲載した。停滞ムード漂う世界の中で、日本だけが元気だというのだ。双日総研チーフエコノミストで、『気づいたら先頭に立っていた日本経済』(新潮新書)の著者・吉崎達彦氏が解説する。

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「もう若くないんだから、いい加減こんなところ来ちゃいかんよなあ」体重と血圧を気にしながら、それでも手を出してしまう。濃厚なスープとごつい麺、極厚の煮豚……そう、「ラーメン二郎」である。ラーメン二郎は全国に約40店舗、いわゆるインスパイア系を含めると膨大な数になり、ラーメン業界の一大勢力を築いている。

「ジロリアン」という熱狂的なファンの存在が知られ、私もそのひとりだ。二郎はすでに単なる食事としての域を超え、エンタメの域にまで達している。直接脳に訴えかけるあの炭水化物、脂質、塩分は快楽そのものといっていい。

 ラーメン二郎の誕生は、日本の多様なラーメン文化の賜物と言える。ラーメン屋の寿命は決して長いものではないが、試行錯誤を重ねた味を追求するチャレンジャーが次々登場している。

 最近、日本のエンゲル係数が上がっていることから「貧しくなった」との指摘があるが、「費用をかけて食を楽しむ人が増えた」と見るべきだ。日本では、食はエンタメとして楽しめるほどの多様性をもつ段階まで来ている。

◆「日本に尋ねよ」

 冒頭からなぜラーメン二郎なのか。日本経済の不調が唱えられて久しいが、実は日本ほど豊かな国はないと言いたいからだ。  株価は上がったものの、国民の多くはその実感がないし、デフレを完全に克服できたわけでもなく、GDP成長もおぼつかないのが今の日本経済だ。ところが、食にこれだけの「遊び」がある国が他にあるだろうか。日本におけるラーメンの多様性は和食文化の多様性であり、日本が本当は大変豊かである証拠と言える。

 このことは世界も気付き始めている。

 米外交専門誌の『フォーリン・アフェアーズ』は2016年3/4月号で世界経済の長期停滞を説く中で、ザチャリー・カラベルという投資家による「停滞を愛せよ~成長は万能ならず。日本に尋ねよ」と題された論文を掲載した。

 日本はデフレと低需要という経済状況にあっても平均寿命は長く、犯罪率は低い。医療と教育は優れていて、格差は広がっていても人々の生活レベルは悪化していない、というのである。

 英国の高級誌『エコノミスト』も2016年夏号で日本経済を特集し、「今のアベノミクスへの評価は低すぎる」などと指摘している。

 リーマン・ショックが起きた2008年以降、「あの国がうらやましい」という存在はどこにも見当たらず、世界はすっかり停滞ムードにある。そんななか世界を見渡してみたら、「日本は不思議に安定している。実は良いんじゃない?」というのが世界の見方になりつつある。欧米各国では実現が難しい、「緩和的な金融政策」や「拡張的な財政政策」を組み合わせて行っている日本は、世界の先頭に立つ存在なのである。

●よしざき・たつひこ/1960年富山県生まれ。一橋大学社会学部卒業後、日商岩井(現・双日)に入社。ブルッキングス研究所客員研究員、経済同友会代表幹事秘書などを経て現職。著書に『アメリカの論理』『1985年』(いずれも新潮新書)などがある。

※SAPIO2017年3月号

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