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【書評】「全共闘世代」の言い方は時代の代表を表していない

NEWSポストセブン / 2017年3月30日 16時0分

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「青年の主張」出場者と話す浩宮様と紀宮様 共同通信社

【書評】『青年の主張─まなざしのメディア史』/佐藤卓己著/河出書房新社/本体1800円+税

【著者プロフィール】佐藤卓己(さとう・たくみ)/1960年広島県生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。京都大学大学院教育学研究科教授。『「キング」の時代』(岩波書店。日本出版学会賞、サントリー学芸賞)、『言論統制』(中公新書。吉田茂賞)など著書多数。

【評者】鈴木洋史(ノンフィクションライター)

 かつて成人の日に放送されていた「NHK青年の主張全国コンクール全国大会」を覚えているだろうか。15歳から25歳が参加する弁論大会で、制服やスーツ姿の若者が直立不動で「私は! そのとき! 思ったのです!」と一文節ずつメリハリをつけて喋る。内容は、困難を克服した経験を披露し、明るい未来を切り開く決意を表明する、といった優等生的なものが多い。番組は見たことがなくても、タモリがやった形態模写を覚えている人は多いかもしれない。

 本書は、その「青年の主張」の歴史を丹念に辿り、戦後の「青年」像の変遷を考察した論考だ。

 大会は1954年度に始まっていったん1988年度に終わり、昭和から平成に変わると「青春メッセージ」と改編、改題されて2003年度まで続いた。古い時代ほど出場者には「勤労青年」「農村青年」や「勤労学生」「定時制高校生」が目立つ。象徴的なのは東大安田講堂の攻防が起こった1969年1月に開催された大会だ。第1位となった「新劇研究生」は友人と未来を語り合う喜びを語り、2位の「農業」に従事する女性は「農村婦人」の壁を打ち破るまで頑張る決意を表明し、3位の「女性会社員」は「敬老」の精神を訴えた。

 それは一般のマスメディアが語る1968年、1969年とは程遠い。普通は学生運動を担った世代を全共闘世代と呼び、その姿を時代の顔と捉える。だが著者はそれを「虚像」と断じる。〈全共闘世代とは、同時になお集団就職世代〉であり、〈数において同世代人口の圧倒的多数を代表したのは、「学生の異議申し立て」より「青年の主張」の方であった〉と書くのだ。これはつい忘れがちな視点ではないか。

 著者も指摘するように、学生運動に対する「勤労青年」に期待する勢力が存在し、大会を研修に活用する企業や、学校、宗教団体、警察・消防が出場に向けて組織動員していた。「青年の主張」に親和性を持つのは保守など「右」とは限らず、のちには入賞した在日韓国人の主張を社会党、共産党が国会で取り上げ、全国の朝鮮高級学校も強力に組織動員し、1990年代から2000年代にかけて5年連続入賞を果たした(応募資格に国籍による制限はなかった)。

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