【著者に訊け】石田衣良氏 IWGP『裏切りのホワイトカード』

NEWSポストセブン / 2017年10月20日 16時0分

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人気シリーズIWGPの第13弾を上梓した石田衣良氏

【著者に訊け】石田衣良氏/『裏切りのホワイトカード 池袋ウエストゲートパークXIII』/文藝春秋/1500円+税

〈人間って成長しないし、格差はなくならないものだよな〉〈この世に上下があるなら、おれは積極的に下が好きなだけだ〉

 石田衣良作『池袋ウエストゲートパーク』シリーズの主人公、〈真島誠〉の言い分である。家業の果物屋を手伝う傍ら、〈池袋のトラブルシューター〉との異名も取る彼は、街や人の変遷を店先から定点観測してきた、まさに下から目線の語り部。シリーズ開始から20周年を数える今も、店の2階に母親と住み、池袋で長期政権を築くGボーイズのキング〈タカシ〉らと、街の厄介事に首を突っ込む毎日だ。

 シリーズ第13作『裏切りのホワイトカード』でも、法外な報酬を餌に〈出し子〉を集める特殊詐欺の罠など、彼の元に舞い込む依頼からはこの国の今が透けて見え、我らがマコト君はというと相変わらずダメで、熱くて、とことん優しい。仮にこれを正義と呼ぶなら、群れず属さずブレない彼の正義を私たちは断固信用する!

「池袋なら池袋という街を細心の注意を払いながら、薄~くスライスしていくと、その向こうにメディアでは語られない、ありのままの今が透けて見えて、物凄くキレイなんだよねえ……」

 と、かつて著者は語っていた。現にIWGPシリーズは一種の社会現象にまで成長し、一時は西口公園に行けばマコトに会えると、錯覚する者もいたほどだ。

「僕にとってシリーズの20年は作家生活の20年でもある。元々はミステリー系の新人賞だからそれっぽいものを書いて応募した、偶然の産物だったんですけどね。マコトが下から目線なのも自分がそうだったからです。

 地下鉄の工事現場で働いた時なんか、昼休みに地上に出て道端で寝るんですよ。肉体労働でヘトヘトだから。すると目の前をOLさんのキレイな足が通るんだけど、地べたに平気で寝るヤツのことなんか眼中にないわけね。その置いてきぼり感が面白くもあったし、世間を物理的にも下から見る目線が、このシリーズのトーンを決めたんだと思います」

 例えば第1話「滝野川炎上ドライバー」で宅配ドライバー〈ジュンジ〉と彼の息子〈トオル〉を危機から救うマコトは、今やIWGP名物となったモノローグをこう始めている。

〈おれたちが生きているのは、即決裁判が許された情状酌量のない時代だ。みんな考えるのが面倒で、善悪をさっさと悩まずに決めてしまいたいのである。とくにネットで見かけた他人のトラブルについてはね〉

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