相撲協会理事選 注目すべきは親方株の所有者

NEWSポストセブン / 2018年1月18日 7時0分

写真

部屋の継承にも様々な形がある(共同通信社)

 日本相撲協会では、2年に一度の理事選が近づくと、存在しながら誰も襲名していない“空き株”を襲名するためにベテラン力士の引退が相次ぐのが慣習だ。ただし、引退した力士が親方となった時、自らの意思で理事選に「1票」を投じられるとは限らない。「借株」という慣習の存在が、事態を複雑にする。

「相撲協会が2014年に公益財団法人化された際、年寄株の売買は表向き禁じられました。しかし、実態としては退職した元年寄などが所有権を持ったまま、後継者から指導料などの名目で“家賃(名跡使用料)”を受け取っているケースがある。それが『借株』です」(若手親方の一人)

 たとえば、昨年末に翔天狼が襲名した「春日山」は、借株であるために大トラブルに発展した過去を持つ年寄株だ。

 先代の春日山親方(元前頭・濱錦)が、先々代の春日山親方(元前頭・春日富士=故人)から借りていた年寄株を買い取る交渉が決裂し、法廷闘争に発展。2016年8月、東京地裁は元濱錦に名跡証書を受け取る対価として1億7160万円を支払うよう命じている(高裁で和解)。

「億単位の額を一度に払える引退力士はほとんどいないので、多くが借株となる。借株の場合、理事選の投票では“所有権”を持つ人物の意向が優先されるのです。

 今回の元翔天狼が継承した『春日山』も借株で、元春日富士の遺族が所有しているとされます。翔天狼は出羽海一門の力士でしたが、春日富士は時津風一門の力士だったので、この『1票』は時津風一門のものになる。しかも、春日富士の遺族の意向で反貴乃花サイドの票に回されると見られます」(ベテラン記者)

 つまり注目すべきは残る空き株の“所有者”なのである。残る5つある空き株のうち3つは、現役力士が所有している。

「押尾川」は尾車部屋(二所ノ関一門)のベテラン力士・豪風(前頭13)が、「秀ノ山」は佐渡ヶ嶽部屋(二所ノ関一門)の元大関・琴奨菊(前頭2)、「安治川」は先場所幕内に返り咲いた伊勢ヶ濱部屋の安美錦(前頭10)が所有する。

「残る『間垣』は時津風部屋に所属した元小結・時天空の遺族が、最後の『熊ヶ谷』は元十両・金親(2015年、暴行事件で協会解雇)の所有とされています」(同前)

 これら空き株が、借株として理事選における「1票」に変わっていくことで、協会の勢力図が少しずつ書き換えられていくのだ。

「執行部が警戒するのは『秀ノ山』と『間垣』の行方です。前者は所有する琴奨菊の師匠である佐渡ヶ嶽親方(元関脇・琴ノ若)が貴乃花親方に近いし、昨年1月に悪性リンパ腫のため37歳で亡くなった時天空も、師匠だった時津風親方(元前頭・時津海)は貴乃花グループとみられています。この2つの空き株が貴乃花親方サイドの『1票』に変わることを八角理事長陣営は全力で防ぎにいくはず。初場所の土俵なんかに、構っている暇はないのです」(同前)

 空き株に限らず、借株が存在することで情勢はより混沌としてくる。幕内上位の力士が、引退前に年寄株を取得し、その株をすでに引退した元力士に貸すケースもあるのだ。

「田子ノ浦部屋(二所ノ関一門)の横綱・稀勢の里が所有する『荒磯』は、元前頭・玉飛鳥が借株として襲名し、同じ一門の片男波部屋の部屋付き親方となっている。こういうふうに同じ一門内での貸し借りなら話はシンプルだが、一門をまたいだ貸し借りは意図が訝られることになる。

 たとえば八角理事長(元横綱・北勝海)のいる高砂一門に属する九重部屋の千代鳳(幕下9)が所有する『佐ノ山』は、時津風部屋の元前頭・土佐豊が借株で襲名して部屋付き親方になっている。時津風親方と貴乃花親方が近いとされるため、そのパイプは九重親方(元大関・千代大海)にもつながっていると考えられるわけです」(協会関係者)

※週刊ポスト2018年1月26日号

NEWSポストセブン

トピックスRSS

ランキング