議員定数は多ければ多いほどいいという考え方の根拠

NEWSポストセブン / 2018年4月19日 7時0分

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佐藤優氏(左)と片山杜秀氏 撮影:黒石あみ

 作家の佐藤優氏と思想史研究家の片山杜秀氏が「平成史」を語り合うシリーズ。今回は、2017年の選挙を振り返り、選挙制度について語り合った。

佐藤:政権が揺れるなか2017年7月の都議選では小池百合子氏率いる都民ファーストが圧勝し、このまま政界再編も起こりうるという報道もありましたが、10月の衆議院選では希望の党が惨敗しました。小池都知事の「排除」発言が敗北の原因と言われていますが、それは違います。政党は政策の一致によって作られる結社なので、それに反対する人を排除するのは当然だからです。

 都議選で小池は公明党と手を組んで勝った。衆議院選で公明党が離れたから敗北した。そこに尽きます。

片山:都議選でも衆議院選でも、彼女は有権者が抵抗勢力を求めるタイミングで登場した。それなら抵抗勢力という虚像に徹しきるべきだった。しかし結局は自分らしく振る舞った。もしも虚像を演じ続けられればまた違った結果になっていたかもしれません。

佐藤:私が2017年の衆議院選で注目したのは475人から465人に議員の数を減らしたこと。そしてそれに批判はなかったことです。それどころか国民は諸手を挙げて賛成しました。

片山:バカな議員にムダな税金を使いたくないと考えたのでしょうね。でも本当に議員定数を削減する必要があったのか考える必要がある。民主主義の理想は国民全員が政治に参加すること。とすれば、議員の数は多ければ多い方がいい。とくに北海道や四国などのように地域社会が崩壊しつつある地域にこそ、たくさんの代表が必要なはずです。しかし、話題に上るのは議員定数の削減ばかり。

佐藤:議員数を減らしていけばどうなるか……。私は、日本が議会制民主主義から大統領が権力を持つ独裁的民主主義に向かっているように思えてなりません。

片山:それは全世界的な傾向ですね。世界中で独裁的な国家が増え、極右勢力が台頭している。

佐藤:片山さんは、世界的に独裁が進んでいる現象をどう捉えていますか?

片山:じっくり議論して安定した社会を継続するのが民主主義です。平和な時代なら議論を尽くして様々な選択を試せた。  しかし世界中でテロがひんぱんに起きている上、日本では原発事故が発生し、北朝鮮が核ミサイルを撃とうとしている。立場の異なる国家同士、あるいは政党同士が話し合って利害を集約する時間的な余裕がなくなっている。

佐藤:ご指摘の通り民主主義の意思決定には時間がかかる。その経緯に耐えられない。だから意思決定に時間をかけない独裁体制を求めてしまう。平成の終わりの安倍一強時代は、国民の集合的無意識が成り立たせていると言えますね。

片山:ただし日本人には首相公選や大統領制に対して無意識の抵抗があります。我々の無意識を支配し、独裁的な民主主義を否定するくびきが天皇制でしょう。いまの今上天皇は戦後の民主主義、平和を尊重しているからなおさらです。

佐藤:その今上天皇が来年退位されます。平成の終わりが日本の大きなカイロス(転換点)になるはずです。

●かたやま・もりひで/1963年生まれ。慶應大学法学部教授。思想史研究家。慶應大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学。『未完のファシズム』で司馬遼太郎賞受賞。近著に『近代天皇論』(島薗進氏との共著)。

●さとう・まさる/1960年生まれ。1985年、同志社大学大学院神学研究科修了後、外務省入省。主な著書に『国家の罠』『自壊する帝国』など。本誌連載5年分の論考をまとめた『世界観』(小学館新書)が発売中。

※SAPIO2018年3・4月号

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