女子レスリングパワハラ騒動 担当記者が「淡々と書く」理由
NEWSポストセブン / 2018年4月1日 7時0分

建設的な解決策も出てこない(時事通信フォト)
女子レスリングで五輪4連覇を成し遂げ国民栄誉賞も受賞した伊調馨に対する、栄和人・協会強化本部長によるパワハラ疑惑騒動の解決は年度をまたぐことが確定した。騒動が長引くわりに、建設的な解決を誘うような論調がマスコミからもあまり出てこないのはなぜか。それは、栄氏によるさまざまな言動が積み重ねられた結果、競技担当だった記者ほど、淡々と報じる気持ちにしかなれないからだ。
スポーツ紙で五輪担当をしていた記者が「一線を越えた出来事」として振り返るのは、リオデジャネイロ五輪前の出来事だ。
「ある記者が、伊調馨さんについての特集記事を書いたんです。その内容は、彼女がレスリングや五輪についてどう考えているのか、何を経験して今の考えに至ったのかなど、五輪四連覇がかかっている選手はどんな人なのかを紹介した内容でした。誰かを批判するようなネガティブな要素は一切ありませんでした。でも、その記事が掲載されたとたん、書いた記者を呼び出して、なぜ伊調を取り上げるのかと詰問したんです。それは30分近く続いたといいます」
同じ競技を担当している記者どうしは、他社であってもよく顔を合わせるので、情報を共有することが多い。この「事件」もすぐに広まり、栄氏は、気に入らない選手を取り上げるだけで恫喝する指導者、という評判が広がった。
「記者を呼び出して、伊調さんを取り上げることそのものにクレームをつけたというのがあり得ないです。百歩譲って彼女を報道で持ち上げてほしくない正当な理由があったとしても、五輪四連覇がかかっている選手の人となりを紹介しているだけの記事ですよ。なかなか単独取材を受けない人だけど、一度は紹介しておきたいと考えるのは五輪担当なら当たり前です。囲み取材でも平気で伊調さんへの不満を長々と喋っていたし、今のような状況になっても実績ある指導者だからと肩入れするのは危険だと考えています」
だからといって伊調に肩入れしたくなるのかというと、それもないと一般紙の五輪担当記者は苦笑する。接触する機会がなさすぎて、思い入れのもちようがないからだ。
「もともと取材を積極的に受けるタイプではないと聞いていましたが、拠点を東京に移してからは、レスリング協会が設定した合宿の取材公開日や大会のとき以外は、ほぼ機会がなくなりました。所属会社に取材申請しても反応がないことが多く、本人が拒否しているのか、別の判断が働いていたのかわかりません。ロンドン五輪で五輪三連覇を達成した直後も、JOC関連で義務になっているもの以外はほとんど断っていて。時間がないと聞かされていたのですが、試合会場をのんびり歩きながら『面倒だから。沙保里さんがやってくれてるし』と言っているのが聞こえちゃって。レスリングのこと以外をアドバイスしてくれる人がいないのは気の毒だなと思いましたが、それだけです」
レスリング関係者の多くは、「うちはマスコミに対してオープンですから」と胸を張って発言する。だが、その「オープン」とは、自分たちに都合がよい宣伝したいことに対してだけ、開けっぴろげだと言えそうだ。
担当記者、元担当記者の多くは、今回のパワハラ騒動について「粛々と取材して記事にするだけです」と語る。栄氏は6月には休養から復帰予定だというが、その頃には建設的な変化が訪れるだろうか。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
大林素子さん 日立を突如解雇され…伊セリエAで再びバレーができた幸せ【その日その瞬間】
日刊ゲンダイDIGITAL / 2021年4月12日 9時26分
-
東京新聞の聖火リレー動画削除。その報道姿勢には批判より声援を
HARBOR BUSINESS Online / 2021年4月11日 8時33分
-
女子50キロ級・須崎 大ケガ乗り越え初五輪切符!伝統の階級で金獲りだ
スポニチアネックス / 2021年4月11日 5時32分
-
池江璃花子「奇跡の東京五輪切符」でバカ騒ぎ メダル煽り重圧かけるスポーツマスコミの過剰報道
日刊ゲンダイDIGITAL / 2021年4月6日 11時10分
-
空手・植原歩にパワハラの香川強化委員長更迭 東京五輪メダル量産に暗雲
日刊ゲンダイDIGITAL / 2021年4月1日 11時30分
ランキング
-
1「かっこよ過ぎ」「男前」鷹・中村晃、同点2ラン後の“振る舞い”に感動の嵐
Full-Count / 2021年4月18日 17時47分
-
2「パットが悲惨で…」 単独首位からまた初Vスルリ…高橋彩華がまさかの「79」大崩れ
THE ANSWER / 2021年4月18日 21時4分
-
3森本貴幸「感謝」パラグアイでデビュー 3月にひき逃げ事件で逮捕
スポニチアネックス / 2021年4月18日 19時10分
-
4甲子園はもはや人災? 力尽きた中京大中京・畔柳、あるスカウトの悲鳴「1週間で500球制限。意味のなさ最悪の形で証明された」
夕刊フジ / 2021年4月17日 17時15分
-
519歳山下美夢有が涙の5打差初V 大会新14アンダーに言葉にならず「すみません…」
THE ANSWER / 2021年4月18日 14時33分