享栄野球部、愛知の私学四強から脱落危機で禁断の強化策

NEWSポストセブン / 2018年8月3日 7時0分

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元中京大中京監督・大藤敏行氏が今秋から監督に

 昨秋、カナダで開催されたU-18W杯で野球日本代表のコーチを務めた大藤敏行に、現場復帰の意志を訊ねたことがあった。

「近々、発表できると思います」

 帰国直後のニュースには驚かされた。全国最多11度の甲子園制覇を誇る中京大中京(以下、中京)の監督を2010年まで務めた彼が、愛知県内のライバル・享栄に転任し、2018年秋から監督になるというのだ。享栄は春が2000年、夏は1995年を最後に甲子園から遠ざかり、中京、東邦、愛工大名電との愛知私学四強の座も危うくなっていた。

 とはいえ、いわば禁断の移籍だ。プロ野球でいえば巨人の元監督が阪神の指揮を執るようなもの。悩んだ末の決断だった。

「やはり、もう一度野球を教えたかった。退任後、朝日放送の野球解説で、甲子園を初めて訪れた日、グラウンドを見渡すと涙が出て来ちゃったんです。甲子園は野球をしに来るところだと痛感しました」

 中京の監督に就任したのは28歳の時だった。同校の戦績が落ち込んだ時期で、愛知大会に負けた直後のOB会では厳しい批判が飛んだ。だが、2009年に堂林翔太(広島)らを擁して夏の日本一となって溜飲を下げた。監督の座を教え子に譲ってからは、中京大学野球部の監督就任の依頼もあったが、断っていた。

 そして昨年5月、享栄監督の柴垣旭延(しばがき・あきのぶ)から直接、監督就任を依頼された。

「私自身の甲子園経験を買って下さったのでしょう。享栄と何度も戦ってきて、18年も甲子園に行っていないのか、というのが本音です。現在は中京に県内の有望選手が一番に集まり、東邦も藤嶋健人(中日)の活躍で人気。名電は寮があるので、県外選手も獲りやすい。ただ、享栄も中京の8割ぐらいの戦力は揃っている。スポーツクラスでは、火・水曜日は14時から練習がスタートし、遅い時だと22時まで練習をやれる。練習量で3校に挑みたい」

 3億円をかけたという屋内施設も完成し、期待の1年生もいる。監督就任は秋からだが、練習メニューなどは既に大藤色が取り入れられ、その効果は早くもこの夏に現れた。西愛知大会では準決勝で敗退。古豪復活の報せが全国に届く日は近いかもしれない。(文中敬称略)

●取材・文/柳川悠二(ノンフィクションライター、『永遠のPL学園』著者) ●撮影/藤岡雅樹

※週刊ポスト2018年8月10日号

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