怪談ナイト26年目の稲川淳二が語る原点と怪談の作り方

NEWSポストセブン / 2018年8月5日 7時0分

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今年の「怪談ナイト」は全国54公演を予定(撮影/江森康之)

 7月14日、宇都宮市文化会館で「稲川淳二の怪談ナイト」がツアー初日を迎えた。稲川が舞台を上手から下手へと歩きながら、観客一人ひとりに話しかけるように「ただいま」と手を振ると、満場の客席から「淳二~」「おかえり!」と歓声が上がる。

「8月で71歳になりますが、今年もこうして怪談を語れてありがたいです。怪談は昔から好きだけれど、仕事にするとは思わなかったので不思議ですね」

 26年目を迎えた今年、「怪談ナイト」は全国54公演を予定。擬音を織り交ぜ、たたみかけるような語り口で観客を引き込んでいくのが稲川怪談の特徴だ。そもそも桑沢デザイン研究所を出て工業デザイナーになった稲川が、怪談を始めたきっかけは偶然の出来事だった。

「27歳の時でしたか、友人の結婚披露宴で司会をして大失敗したんです。でも、それが面白かったみたいでラジオ番組にスカウトされたんです」

 数日後、ニッポン放送『オールナイトニッポン』のパーソナリティに抜擢された稲川は、独特の話術で人気を集めていく。やがて番組で披露した怪談が評判となり、リクエストされる機会が増えていった。芸能界での活躍の場は広がり、リアクション芸人としても一世を風靡したが、55歳で怪談に専念しようと決意する。

「1993年に初めて『怪談ナイト』を開催したら楽しくて。生前、山城新伍さんに『仕事を遊んじゃいけないけど、遊びが仕事になったらいいね』といわれていたこともあって、歳をとってテレビの仕事が減ったから怪談を、というのはお客様に対して失礼だから元気なうちに専念しようと思ったんです」

 かくして怪談の語り部となったが、「いざやってみると疲れてボロボロです」と苦笑する。夏から秋とツアーで全国を回り、終われば翌年の準備に入る。毎年、オリジナルの新作怪談を発表するが、稲川が語るのは、現代社会のどこにでもありそうな身近な怖い話。全国に足を運び、地元の人に聞いた話を元に再取材して怪談を完成させる。

「真剣に取り組んでみると、次はもっといい仕事をしたいと思うから手が抜けません。私には怪談の師匠はいないし、習ったこともありません。原点はオフクロが聞かせてくれた怪談です」

 戦後の娯楽が少ない時代、毎夜母が語る怪談は、稲川にとって身近な存在で、「日常そのもの」だった。

「東京でも夜は真っ暗。幽霊が出てもおかしくないんです。弟と並んで布団に入ると、私たちの間にお袋が座って『これはねぇ、私が子供の頃に本当にあった話なんだよ……』って、ぽつりぽつりと話してくれる。怖かったねぇ」

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