中国訪問、結婚、日韓W杯…「今上陛下のお言葉」を振り返る

NEWSポストセブン / 2018年9月15日 7時0分

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天皇陛下のお言葉に多くの国民が共感した(2016年8月8日) 読売新聞/AFLO

 平成の世も残すところあと半年あまりとなった。平成最後の終戦記念日の「全国戦没者追悼式」で今上陛下はあらためて「ここに過去を顧み、深い反省とともに、今後、戦争の惨禍が再び繰り返されぬことを切に願い」、追悼の意を表された。現行憲法下で即位し、「象徴天皇」のあるべき姿を模索しながら、慰霊の旅を続けた今上陛下のお言葉は、多くの国民の胸に刻まれたことだろう。今上陛下に限らず、歴代天皇の言葉は民の幸せを祈って発せられ、また民を導き、そして日本という国を形づくってきた。文芸評論家の富岡幸一郎氏が、あらためて噛みしめたい今上陛下のお言葉を紹介する。

●平成4年10月23日 訪中時のスピーチ
〈貴国と我が国との交流の歴史は古く、特に、七世紀から九世紀にかけて行われた遣隋使、遣唐使の派遣を通じ、我が国の留学生は長年中国に滞在し、熱心に中国の文化を学びました。〉

「両陛下の中国訪問には反対論もかまびすしかったが、北京の人民大会堂での晩餐会でのスピーチは、歴史を顧みての『両国』の姿を浮き彫りにした。まさに『時』の深さに根ざした文化の本質を呼び起こす言葉であった」(富岡氏・以下「」内同)

●平成13年の誕生日会見
〈桓武天皇の生母が百済の武寧王の子孫であると、続日本紀に記されている〉

「平成十四年の日韓共催のワールドカップを前にして陛下は、両国の深い歴史的交流を想起させ、反日や嫌韓の偏狭な感情をこえていくべき途を示そうとされた。それは政治による外交の壁をこえる、象徴による交流への強い思いである」

●平成27年1月 新年に当たり
〈本年は終戦から70年という節目の年に当たります。多くの人々が亡くなった戦争でした。(中略)この機会に、満州事変に始まるこの戦争の歴史を十分に学び、今後の日本のあり方を考えていくことが、今、極めて大切なことだと思っています。〉

「陛下があえて『満州事変』に言及されたのは、『戦争の歴史』を風化させてはならないとの真実なる思いからであろう。翌平成二十八年の終戦記念日の全国戦没者追悼式では、『ここに過去を顧み、深い反省とともに』の言葉が挿入された。『深い反省』とは決して自虐史観などではなく、自国の『戦争』の歴史を忘却するなかれとの天皇の祈念であったのではないか」

●平成25年 80歳のお誕生日会見
〈天皇という立場にあることは、孤独とも思えるものですが、私は結婚により、私が大切にしたいと思うものを共に大切に思ってくれる伴侶を得ました。

 皇后が常に私の立場を尊重しつつ寄り添ってくれたことに安らぎを覚え、これまで天皇の役割を果たそうと努力できたことを幸せだったと思っています。〉

「この時、すでに陛下は次の御世のことを考えておられたのではないか。『天皇の役割』とは何か。御自身はいかに『努力』されてきたか。すべては二年半後のあのビデオメッセージが今はっきりと物語る」

【PROFILE】とみおか・こういちろう/1957年、東京都生まれ。中央大学文学部フランス文学科卒業。関東学院大学国際文化学部比較文化学科教授、鎌倉文学館館長。著書に『虚妄の「戦後」』(論創社)、『西部邁 日本人への警告』(共著、イースト・プレス)などがある。

※SAPIO2018年9・10月号

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