【著者に訊け】堀越英美氏 『不道徳お母さん講座』

NEWSポストセブン / 2018年9月19日 7時0分

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堀越英美・著『不道徳お母さん講座』

【著者に訊け】堀越英美氏/『不道徳お母さん講座 私たちはなぜ母性と自己犠牲に感動するのか』/河出書房新社/1550円+税

 今春、ついに小学校で正式な教科となった道徳の授業。「国の基準で道徳に成績をつけるなんて!」とお怒りの方もあろうが、『不道徳お母さん講座』の著者・堀越英美氏にとってそれは、日本人の道徳と歩みについて考える入口に過ぎなかったという。

「私には娘がいるのですが、学校でも『みんなで頑張って絆を深めよう』みたいな同調圧力があり、何か事情があって頑張れない少数派の意見はないことにされてしまうんですよね。一体何がそうさせるのか、私自身も含めた心の原点を探るには、明治以来の教育史を一通り遡る必要がありました。教科化を悪者にしても何も変わらないので」

 本書では日本人の道徳観がどんな意図や教材の下に作られてきたかを具体的な根拠をもって検証。すると〈敵は大きすぎて、丸腰で立ち向かってはゆるふわ感動モードに流されかねない〉とあるように、最大のクセ者は〈感動〉だった!?

 奇しくも取材日は大阪桐蔭VS金足農による高校野球決勝当日。『キャプテン』世代の著者も、『ドカベン』世代の筆者も、正直、気が気でない。

「いかにも昭和の子供ですよね(笑い)。私は昭和48年生まれのガンダム世代でもあって、みんなで力を合わせて戦ったりする物語に感動もしてきたし、それ自体は悪いことではないはず。ただ最近はその感動を徒に押し付け、少数派を退ける傾向が強くなっている気がして、『感動をありがとう』と言うことが絶対善かのようになったのはなぜなのか、私も知りたかったんです」

 例えば道徳教材〈お母さんのせいきゅう書〉を読ませることで、〈母親の無償の愛に感動して涙する子供の物語〉を道徳としてなぜ教える必要があるのかと氏は疑問を呈し、他にも〈「二分の一成人式」に「巨大組体操」〉等々、〈感動の押し売り〉は、教育現場を息苦しくしているだけだと綴る。

「ことは学校に限りません。例えば企業で同僚が自殺しても『みんなが頑張ってるのにあいつは弱い』とか、『子供を自然に育てるのがイイ母親で、スマホに頼るのは悪い母親』とか、そのみんなが滅私奉公や理想の子育てを強いられる現状を、なぜか変えようとはしない。特攻隊もそうです。なぜあんな無謀な作戦が美談にすらされてしまったのか、そこには多くの童話や児童文学による刷り込みの歴史が深く関係していました」

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