津川雅彦さん 織田信長役で「役者の真髄」を理解した

NEWSポストセブン / 2018年9月14日 16時0分

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津川雅彦さんが大河の当たり役を振り返る

 映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、先日亡くなった俳優の津川雅彦さんが、歴史上の人物を演じたことで得た役者の真髄について、若い人たちへの理解について語った言葉を紹介する。

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 前回に続き今回も、先日亡くなられた津川雅彦を追悼して昨年のインタビューから未掲載エピソードをご紹介する。

 歴史上の人物を多く演じてきた津川だが、中でも最初に手応えを感じたのは一九六四年のテレビシリーズ『徳川家康』(NET=テレビ朝日)で織田信長役を演じた時だったという。

「一番面白かったのは初めて浮気をする場面だったな。正室のお濃を恐れているんだけど、あえて『わしは妾を持つ』と宣言して馬で出て行くんだよ。

『こういうことなんだな、こいつのすごさは』って思った。お濃も怖い人なんだ。でも、だからといってウジウジと『ちょっと妾をつくっていいかな』みたいなことは言わないんだよ。

 桶狭間の戦いがそうだったように、そういうふうに人の意表を突くっていうことが彼の真髄だったんだ。で、それは役者の真髄でもあると思ったんだ。

 それで、そういう信長らしいセオリーを芝居にも活かそうと思ったのさ。つまり、人がこうと思うことの逆をやる。上と思ったら下に、裏と思ったら表っていうふうに、真逆真逆をやっていく。それも、ただ嘘をつくだけじゃなくて『えっ』『あっ』『なるほど』と思わせる。

 ただ意表を突くんじゃなくてね。最後に『なるほど』がつかないと桶狭間にはならないわけさ。そういう芝居を自分なりに発見していったんだよ。じゃあ、このときには信長はこういう言い方をするだろう、と。

 そのとき、生まれて初めて、周りがみんな『おまえ、いいぞ』っていう顔をしてくれるようになったんだ。『兄貴の芝居はうまいけど、弟は顔はいいのに下手』っていうレッテルがやっと剥がれてきたと思えたよ」

 晩年まで現役の役者であり続けた津川。邦画界でも屈指のキャリアの持ち主は、現場で若手とどう接していたのだろう。

「すてきな若手はたくさんいるんだ。で、一緒にいるときには、『あの映画のあの役はよかったね』とかちゃんと伝えるようにしているよ。そういうふうにして、なるべく彼らの考え方に自分もついていくようにならないと。若い人たちの会話にはついていけないんだけどさ、ついていけないのは、奴らだけのせいじゃなくて、こっちの理解不足もあるんだよね。だから、若い連中のことも理解できればと思っているんだよ。

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