橘玲×中川淳一郎 ウェブへの希望が幻滅へと変わるまで

NEWSポストセブン / 2018年10月2日 16時0分

◆ネットのコメント欄は悪意の吹き溜まりになる

橘:2006年の体験はどんなものだったのですか?

中川:アメーバニュースというニュースサイトの編集を始めました。これはネットニュースの先駆け的なサイトといってもいいのですが、開始2日目に、雑誌の感覚で作っちゃったら大炎上しましたね。雑誌だと「今月は○○の日があるから、これに関連したネタを出せばいい」といった特集を作ったりするじゃないですか。

橘:よくありますよね。クリスマスが近いからクリスマスの大特集をやったり、何かが誕生して○周年だからその話題で何ページも作ったりとか。

中川:8月1日がアメーバニュースのオープニングデーだったのですが、ネットニュースというものは破天荒に色々やればいいと思っていたので、開始2日目の8月2日が「パンツの日」ということで、パンツの記事ばかり出したんですよ。スカートめくりばかりするキャラが登場する漫画『まいっちんぐマチコ先生』のえびはら武司先生に取材したりとか、当時流行していたという「パンツハンター」というお遊びの取材をしたりしました。

橘:「パンツハンター」って何ですか?

中川:これを取材したライターによると、植え込みとかに女性がパンツを置いておくんですって。パンツを置いたことをネットの掲示板に書いておくのです。それを書き込んだ女の人はその植え込みをどこからか見ていて、「バカな男達が性欲ムンムンで私のパンツを取りに来てるわ、ウヒヒ」と見て楽しむんだと。

 こうしたパンツにまつわるバカネタばかりを8本、トップページに掲載ところ、「ふざけたサイトだ、これがニュースか!」とコメント欄が炎上して、以後、誰かを罵倒したい人の遊び場になっちゃったんですよ。こんなことを2日目に経験し、編集を開始してから1週間で、「ネットのコメント欄って悪意の吹き溜まりになるんだな……」というのが身にしみてわかりました。だったら後はネット民の生態を研究してやれ、とばかりに彼らの発言等をメモし続け、そこから3年後の『ウェブはバカと暇人のもの』発刊につながるんです。

橘:ウェブにある種の希望や期待を持った人たちが、どんどん幻滅していったのがこの10年なんじゃないでしょうか。中川さんの本で知ったのですが、Web2.0を提唱した梅田望夫さんが「日本のウェブは残念」とツイートして炎上した事件があったんですよね。

中川:あれはものすごくショッキングだったし、皆が信じたくなかった出来事だったんですよ。ただ一方で、ネットユーザーも少し可哀想だったんです。水村美苗さんというアメリカ在住の小説家・評論家が書いた『日本語が亡びるとき』という本のレビューを梅田さんが書いたんですね。この本の中身は、世界共通言語である英語っていうのを知っておかないとまずいという話なんです。

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