患者の死亡率 外科医は若手、内科医はベテランで高くなる?

NEWSポストセブン / 2018年10月6日 7時0分

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ベテランと若手、どちらが良いのか(写真はイメージ)

 30代前半の医師が、こちらが症状を説明し終わらないうちに「わかりました」と言ってカルテに病名らしきものを書き始める。女性の泌尿器科医から「前立腺肥大の可能性」を告げられる──患者の頭の中に「この医者、本当に理解している?」と疑問が浮かんだ時、どう判断すればいいのか。

「60歳を過ぎてから左目の視野が狭まってきたので、近所の眼科に行ったら60代後半と思しき医師から緑内障と診断された。その後、点眼薬を使って治療を続けたが、視野は狭まる一方だったので、不安になり総合病院で診察してもらった。すると担当の若い医師が『CTスキャンを撮りましょう』というので検査したら、原因は脳梗塞だった」

 都内在住の竹田義一氏(仮名・62)が今春、経験した話だ。幸い初期の脳梗塞だったため血栓溶解剤を使った薬物治療で、今は快方に向かっているという。誤診の理由を「二本松眼科病院」眼科専門医の平松類氏が解説する。

「大脳皮質にある視覚野に血栓の詰まりである梗塞ができると、視野狭窄など緑内障と同じような症状が出ます。経験に頼りがちな高齢医師ほど症状だけを見て、入念な検査をする前に緑内障と診断を下してしまうケースがある」

 欧米では、誤診リスクも含めた医師の治療実績(パフォーマンス評価)に着目する傾向にあるという。

「そんな背景から治療実績と関係する医師の特徴は何かが研究されている。なかでも、近年医師の年齢と治療実績の相関関係を数値化した研究結果に大きな注目が集まっています」(医療経済ジャーナリストの室井一辰氏)

 その1つがカリフォルニア大学ロサンゼルス校助教授の津川友介医師による研究だ。津川氏が160万人の症例を調査すると、内科医だと年齢が上がるほど患者の死亡率が高くなり、外科医だと逆に年齢が下がるほど患者の致死率が上がる結果になったのだ。

「一般に医師は高齢になるほど“経験”に重きを置き、若手は“知識”で診断する傾向があります。外科の場合、手術の技術向上には経験が必須ですが、内科は年齢を重ねるほど新薬をはじめとした最新の知識に追いつけなくなる面がある」(米山医院院長の米山公啓氏)

 不整脈の一種である心房細動などの治療薬として知られる抗凝固薬・ワーファリンは血が止まらなくなるなどの副作用がある。しかし2011年に副作用の少ない抗凝固薬・プラザキサが登場。

「若い医師ほど患者の症状に合わせてプラザキサを積極的に処方する一方、高齢医師は“これまで大きな問題はなかったから”という理由で、いまだにワーファリンを処方し続けている傾向がある。鼻血が止まらないなどの副作用症状から解放される機会を逃している患者も多いと考えられます」(医療ジャーナリスト・油井香代子氏)

 経験が足りないが故に、若手医師が正確な診断ができないケースもある。痔と大腸がんは症状がほぼ共通しているため見極めが難しいことで知られる。便に混じる血の色などから専門クリニックでの検査へと繋げる判断には「経験がモノをいい、若手医師だとがんを見逃すケースが少なくない」(米山氏)という。

※週刊ポスト2018年10月12・19日号

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