古谷経衡氏が釜山の“徴用工博物館”から学んだこと

NEWSポストセブン / 2019年1月9日 7時0分

 なぜ日本政府はこういった類の施設を造らないのだろう、とつくづく思う。かつてソウルの「独島体験館」に行ったことを想い出した。十数億円の総工費で極めて現代的なデジタル演出を用いて「独島領有権の正当性」が整然と展示されていた。何故日本は、「東京大空襲記念館」とか「広島・長崎原爆記念館」とか「沖縄戦記念館」を東京都心に造らないのだろうか。50億円は、日本のような大国からすると大海の一滴だ。

 そうした戦争博物館を国立施設として首都に造り、アメリカの大統領が来るたびに見学を義務とさせる、というくらいの気骨はないのだろうか。フロリダで一緒にゴルフをやって笑っている場合では無い。要するに、やる気がないし興味も無い。その一言に尽きる。

「歴史を忘れた民族に未来は無い」という韓国のスポーツ大会での対日批判横断幕を日本のネット右翼がよく揶揄している。確かに徴用工問題では、その横断幕はブーメランのように韓国民に跳ね返っていきそうだ。日韓請求権協定を無視した今般の主張は、巡り巡って日韓関係を悪化させ、韓国民に不利益をもたらすだろう。

 しかし同時に「歴史に無関心な民族にも未来は無い」と置き換えれば、それはまさに私たち日本人そのものの映し鏡である。隣国の政治状況は、モザイク的に入り組んでおり、「反日」「親日」という単純な二項対立ではない。

 ところで現在はなんとか持ちこたえている文在寅だが、いみじくも盧がそうだったように、いつ「政治報復」の砲火に晒されるかは分からない。

 韓国の現代政治状況は日本以上にドメスティックで、時として“道徳的”バイオレンスをはらんでいる。韓国大衆が文在寅にいつ掌を返すのかは、株価予測よりも至難である。韓国政治は獰猛な生き物のようで、予測がつかない。釜山が文在寅の「生」の地であると同時に、将来の「死」の地にならないよう心から願う。

 しかしもしそうなった場合、そのとき私はふたたび、躍動する釜山を訪れてみよう。

●ふるや・つねひら/1982年北海道生まれ。日本ペンクラブ正会員。立命館大学文学部卒業。主な著書に『左翼も右翼もウソばかり』『草食系のための対米自立論』。最新刊は『女政治家の通信簿』。

※SAPIO2019年1・2月号

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