日本相撲協会と横審は稀勢の里を身勝手・露骨に延命させた

NEWSポストセブン / 2019年1月23日 7時0分

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会見では涙も見せた(共同通信社)

「土俵人生において一片の悔いもございません」──会見で絞り出したその言葉は、横綱・稀勢の里の真意だったのだろうか。常に周囲の打算や思惑に翻弄され続けた日々だった。2017年1月、日本相撲協会の諮問機関である横綱審議委員会は、わずか15分の審議で、稀勢の里の横綱昇進を決めた。

「重圧に弱く、横綱に勝ちながら、平幕相手に油断する癖がある」

 そう認識されていた稀勢の里は、「過去2場所の連続優勝」という条件は満たしておらず、「それに準ずる成績」として昇進した。

「協会は是が非でも日本人横綱が欲しかった。そのために横審に対して、稀勢の里の直近6場所の成績を、朝青龍、白鵬、日馬富士、鶴竜の昇進前6場所の資料と合わせて提示するという“特別扱い”で後押ししました」(協会関係者)

 八角理事長(元横綱・北勝海)は「過去1年の成績を見て、安定感が一目瞭然で、委員の皆さんも驚いていた」と露骨に喜ぶコメントまでしている。

 昇進の基準が甘すぎるという声はあった。しかし、協会にとっては雑音でしかなかっただろう。稀勢の里が新横綱として臨んだ2017年3月場所は、前売りチケットがわずか2時間半で完売し、かつての「若貴フィーバー」に匹敵する相撲ブームが到来した。

「特別扱いして横綱に押し上げた協会ですら、ここまでの盛り上がりは予想していなかった。異常なほどの過熱ぶりに、今度は1日でも長く稀勢の里に横綱でいてもらえるよう動き始めた。不甲斐ない取組で、通常なら進退伺いとなる状況でも擁護。露骨な延命が見られるようになった」(同前)

 毎回のように、場所前の稽古を評して、同じ二所ノ関一門で協会ナンバー2の尾車親方(元大関・琴風)が、

「良さそうだね。前回よりずっと戻ってきている」

 などとリップサービスするのが恒例化したのはそのためだ。それがまた「実際に本場所が始まると勝てない」こととのギャップを際立たせることになった。それでもなお、稀勢の里に頼った背景には、2017年10月に起きた元・日馬富士による暴行事件もあった。

「後に天覧相撲も辞退せざるを得なくなるほどの不祥事に、協会はブームが終わってしまうと危機感を覚えた。その上、日本人横綱がいなくなるとなれば、人気は地に落ちかねない。どんどん稀勢の里を守る方向へと傾いていった」(同前)

 その一方で、本気で稀勢の里を評価しているわけではなかったことも窺える。

「昨年9月場所の初日に、稀勢の里は237日ぶりの勝利を挙げましたが、その翌日、協会広報部から大手メディアで作られる記者クラブ相手に、“稀勢の里が引退した場合、翌日に正式に通達する。引退会見は国技館の大広間になると思う”と説明があったのです」(スポーツ紙デスク)

 協会は当時、本誌の取材に対して“幻の引退会見”を否定したが、場所前には広報部長の芝田山親方(元横綱・大乃国)の「広報部としては(稀勢の里の)万が一に傾いている」という発言が報じられた事実もある。

 結局、誰も稀勢の里を信じていなかったのだとすれば、あまりに悲しい。

※週刊ポスト2019年2月1日号

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