東電を経営破綻させずに税金で救済した場合の懸念点とは何か

NEWSポストセブン / 2012年3月1日 7時0分

 東京電力の国有化問題が注目を集めている。「国有化」といえば、かつての日本長期信用銀行や日本債券信用銀行、最近では日本航空(JAL)などの例がある。これらと今回の東電はどこがどう違うのか。東京新聞・中日新聞論説副主幹の長谷川幸洋氏が解説する。

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 まず新聞をみよう。産経新聞は社説で「活力損なう介入は慎重に」との見出しを掲げ、こう主張した。

「公的資金の注入は、原発事故賠償と電力供給に責任を持つ東電の経営破綻を避けるための措置であることを銘記すべきだ。国の経営権取得で非効率な企業運営に陥るようでは元も子もない。重要なのは東電に民間としての活力を生かして責務を果たさせることだ」(2月20日付「主張」)

 公的資金(最終的には税金)が事故賠償に使われるのはやむをえない。いまの法的枠組みは原子力損害賠償支援機構が一時的に立て替えて、後で東電が長期返済する仕組みになっている。ところが実際の賠償費用は100 年経っても返済できないような巨額に上る。全額を返すかどうかさえ怪しい。つまり一種のフィクションなのだ。

 問題は公的資金が「東電の経営破綻を避けるため」に使われるべきかどうか、という点にある。結論を先に言えば、私はそう思わない。

 東電を経営破綻させずに税金で救済してしまうと、何が起きるか。会社自体は存続しているので、株式には値段がつく。株主は株を売却すれば、多少なりとも投資したカネが戻ってくる。融資した銀行も債権カットを求められず損しない。一方、国民は税金で賠償や除染、廃炉などの費用を負担させられることになるのだ。

 カネ儲けで東電株を買った株主や融資した銀行が損しないのに、なぜ無関係の国民が税で負担しなければならないのか。日本は自己責任が原則の資本主義だ。そんな理屈は通らない。

 東電処理の原則は3つある。被災者への十分な賠償、国民負担の最小化、そして電力の安定供給である。国民負担を最小化しつつ十分な賠償をするには、株式の100%減資と銀行の債権カットが大前提だ。

 別途、電力供給に万全な仕組みをつくったうえで東電を一時国有化する。国有化は3年もあれば十分だ。最終的には発電と送配電を分離したうえ、再民営化すればいい。

 先に挙げた長銀や日債銀、JALもすべて一時国有化の過程で株式は100 %減資され、紙くず化した。それで株主責任を果たしてもらったのだ。

※週刊ポスト2012年3月9日号



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