名古屋から2時間半 江戸から続く伝説の売春島へ行ってみた

NEWSポストセブン / 2012年3月27日 16時0分

 その島は、華やかな観光地のほど近くに、ひっそりと身を隠すようにあった。江戸時代に漁師たちの「風待ち島」として栄え、「飯盛女」たちが、給仕をしながら、夜の相手にもなった。島には平成の今も、その風習が残り、男たちが一夜を楽しむために訪れる──。ノンフィクション・ライターの高永昌也氏が伝説の島に上陸した。以下、高永氏の潜入レポートである。

 * * *
 名古屋から電車とバスと渡し船を乗り継いで2時間半ほど。湾の深奥部に浮かぶZ島。予約していた旅館に渡船場で、「着いた」と連絡した。8軒の旅館連合の迎えの船が来た。直線距離で600メートル弱。3分。ひとり150円。

 午後5時、半分酔っぱらっている9人の御一行様と同船した。船の前方に、緑の山並みが浮かんでいる。手前に旅館がいくつか。50がらみの茶髪のおばはんが船着き場で迎える。

「ああ、こっちやこっち」

 宿に案内しながら説明する。「にいちゃん、ショート2時間、2万。泊まり11時から朝の7時、4万」

 いきなり、朝まで付き合う女のカネまであっさり明かされた。かつては100人を越す女がいたという。いまは30人ほど。漁協員らが、外国の女が島に入るのを規制し、イメージチェンジに取り組んできた。

 晩飯まで時間がある。島を歩いてみる。中心の通りに、わずかな野菜と日用品を扱う店が1店、左右にラーメン屋とスナック。店と呼べるものはそれだけ。あとはつぶれた店舗、廃家……看板ははずれ、文字は消え、鉄が錆びついている。

 ひとつ裏通りに潜る。行き交う人のやっとすれ違える路地が右にくねり、また右、さらに左へ続く。軒の低い、薄暗い家が並ぶ。住んでいるのか無人なのか、よく分からない。海側から離れて山へ、坂道を行く。また廃家、廃屋、廃旅館、廃民宿。すさまじい〈廃〉がつづく。浮かれた期待とはうらはらの荒寥の光景である。

 だが、普通の暮らしもなくはない。猫の額の空き地でエンドウが蔓を伸ばし、ホウレンソーが育っている。洗濯ものがかかっている。廊下、手すりが崩壊したアパート、マンションが点在し始めた。坂をのぼりつめ、くだる。ピーク時3億円の年商のあったリゾートホテルが横たわっていた。足を踏み入れてみた。

〈フロント〉〈キャッシャー〉の表示板の棄てられたロビーに布団が散乱し、ソファーがうち崩れ、段ボール箱がころがり、ルームキィが放り投げられている。ロビー脇の、海の夕映えがさすプールに藻が浮いている。

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