30代:「家を買う、買わない」で資金計画はどう変わるか -年代別“一生困らない”お金の貯め方【2】
プレジデントオンライン / 2013年7月24日 9時45分
■老後に払う家賃は2000万円超!
家庭を築き始めた30代にとって、マイホームを買うか否かは最大の関心事の1つだろう。
少なくとも老後資金を考えるうえでは、マイホームを買ったほうがいい。老後も賃貸生活を続けるとすれば、家賃の分だけ老後資金が多く必要になるからだ。老後の家賃を月8万円とすれば、25年間だと2400万円になる。マイホームを持てば維持費やリフォーム費用がかかるが、それらを計1000万円と見積もっても、老後資金は1400万円も多く必要になる計算だ。
現在の金利水準なら、家賃とほぼ同等の負担でマイホームを購入できる。左に挙げたマイホーム派のケースでは、住宅ローンを借入額3500万円、金利2%、期間30年(65歳完済)で組んだ設定だ。この場合の返済額は年間約142万円(毎月約11万8000円)。ほかにマンションの管理費・修繕積立金、固定資産税などが年間約25万円かかるが、住宅ローン控除でこれらの経費は当面の間、相殺される。
一方、賃貸派の家賃は月額12万円で、年間では144万円を想定した。
つまり、マイホーム派と賃貸派の住居費はほとんど同じということだ。だが、賃貸派は老後に備えて、より多くの貯蓄や投資に励む必要がある。
図の例では、マイホーム派、賃貸派いずれも家庭年収は650万円。うち夫の年収550万円からは税金・社会保険料113万円を差し引かれる。妻のパート年収100万円に子ども手当24万円を加え、手取り年収は約560万円だ。この中から老後資金と教育費を貯めていくが、教育費は状況によって大きく異なることもあるので、2つの資金は分けて考えたほうがいい。
マイホーム派は、老後資金のベースとして毎月3万円を積立投資。外国債券型投信に1万円、外国株式型投信に1万円、純金積立に1万円の組み合わせだ。外国債券型投信は高金利に注目して豪ドルなど、外国株式型投信は高い経済成長に期待してインド、ブラジルなどを選択。さらに純金積立は、価格の動き方が債券や株式と異なる点に注目して、ポートフォリオの安定化を図るために組み入れる。
教育費としては、毎月2万円を積み立てるとともにボーナスから30万円を年2回貯蓄。こちらは安全性を重視して、毎月の積み立ては銀行の積立定期や財形貯蓄、ボーナスは30万円のうち20万円を個人向け国債(変動金利、期間10年)、10万円を銀行定期預金や財形貯蓄に預ける。
子供の教育費が本格化するまではこの貯蓄ペースを維持。子供の高校(私立なら中学)進学から大学卒業までは、貯めた教育費を取り崩しながら、老後資金の積立投資だけは継続する。下の子が社会人になる20年後(夫の年齢55歳)から5年間が、老後資金づくりのラストスパートだ。この間は積立投資のほかに年間200万~300万円を貯蓄して計1000万~1500万円の資金をつくる。再就職後の60歳から65歳の間は収入が減るので貯蓄は難しいが、積立投資だけは継続する。
こうして65歳時点まで毎月3万円の積立投資を続ければ、投資元本だけで1080万円、もし年4%(税引き後、以下同)の運用ができれば資金は約2100万円になる。55~60歳の間に貯蓄した資金と合わせれば、約2100万(積立投資の運用利回り0%、55歳からの貯蓄1000万円)~3600万円(積立投資の運用利回り4%、55歳からの貯蓄額1500万円)の資金ができる計算だ。
■家賃上昇に備える、ハイリスク運用が必要
賃貸派の資金計画はマイホーム派より厳しい。老後資金のベースは毎月6万円の積立投資だ。さらに、賃貸の場合は将来の家賃や不動産価格上昇に備えるため、将来的なインフレへの備えがマイホーム派より重要になる。そこで、積立投資のポートフォリオはより積極的なものとする。具体的には、外国債券型投信2万円、外国株式型投信2万円、純金積立1万円のほかに、全体のバランスも考慮して国内株式型投信(日経平均225などインデックス型)を1万円組み入れる。運用が積極的になった分、価格のチェックや対応にも手間をかける必要があるだろう。
ボーナス時は教育費として40万円を年2回。個人向け国債(変動金利、期間10年)30万円、定期預金や財形貯蓄10万円の組み合わせだ。55歳から60歳までのラストスパートで計1000万~1500万円を貯め、65歳まで老後資金の積立投資を継続する。毎月6万円の積立投資は30年間で投資元本が2160万円、年4%の運用ができれば資金は約4200万円になる。老後資金の合計額は、マイホーム派と同様に計算すれば約3160万~5700万円に達する。
マイホーム派より約1000万~2000万円多い資金は、老後の家賃に充ててもいいが、老後の暮らしにふさわしい小さな住宅を購入したり、老人ホームの入居費用に充てる方法もある。いずれにしても、老後資金づくりでは、老後の住居をどうするかが大きなポイントになることを頭に入れておきたい。
(ストックアンドフロー代表取締役、ファイナンシャル・プランナー 浅井 秀一 構成=有山典子 写真=PIXTA)
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