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子どもの生きる力を育てる父親の役割

プレジデントオンライン / 2013年8月14日 10時45分

「ちょっと、お父さんが厳しく叱ってくださいよ!」妻からの突然の指令。さて、どう叱る? 子どもの心に染みる叱り方、できますか?

これからの世の中、子どもが40歳過ぎても結婚もせず、定職にも就かずにいつまでも扶養家族でいるという状況はますます増えるだろうと、明治大学文学部教授であり、教育カウンセラーでもある諸富祥彦さんは見ている。決して他人事ではない。生きていく力は小さい頃からコツコツと育てていかなくては、いざ就活だ、やれ婚活だと焦って始めてもうまくいくわけがない。

子どもの生きていく力を育てることこそ子育てであり、その力をつけるために叱るはずなのだ。

「父親がガツンと叱るというのは母親の都合に合わせた役割期待です。母親の手に負えないから父親というのもありなのですが、父親の役割がそれだけというのはイメージが貧困ではないでしょうか。父親の教育上の役割をきちんと夫婦で話し合うことが必要です。夫婦のコミュニケーションがうまくいっていれば子どもは育つのです」

では父親の役割とはなんだろう。

ひとつは仕事は楽しいという、働くことへのポジティブなイメージを子どもに伝えることだと諸富さんは言う。

「仕事が大変だ。忙しくて辛いのを我慢して、俺は家族のために働いているんだというメッセージを出していませんか? それでは子どもは父親に感謝するどころか、働くのは嫌だなと、仕事にネガティブなイメージを持ってしまいます」

すると成人して就職しても長く続かず、安易に転職を繰り返すことにもなりかねない。

「日本はキャリア教育が決定的に不足しています。両親以外の大人との交流があまりにも少ない。だからいくつになってもやりたいことが見つからないのです。できれば、家にさまざまな職業の友人を招いて、世の中には多くの仕事があって、いろんな面白いことがあるんだと知るチャンスを子どもに与えてください。より具体的な将来の夢が抱けるようになります」

父親は子どもにとって社会との接点。人生を楽しむ姿、仕事を通じ、社会の役に立つわくわく感をもっと子どもに伝えなければいけないのだ。

■コミュニケーション能力を高める叱り方

また、生きていくうえで必要なのはコミュニケーション能力とよくいわれるが、叱られる場面こそ子どもがコミュニケーションを学ぶいいチャンスだと、諸富さんは指摘する。

コミュニケーションで大事なことは相手の気持ちを理解しつつ自分の気持ちも伝えること。子どもの言い分も聞きつつ、親の気持ちを伝える。子どもにわかるように理由を説明しなくてはならない。

「コミュニケーション能力をフル活用した叱り方をしていれば、子どものコミュニケーション能力も育つのです。一方的にガミガミ叱っていても育ちません。長い目で子どもが生きる力を持てるよう考えて、いいコミュニケーションのモデルを示すような叱り方をすることです。そういう意味で子どもに対して父親の果たす役割は、決して小さいものではないのです」

諸富さんは子育ての基本は褒めて、成長を一緒に喜ぶことだという。子どもに自分はやればできるという自己肯定のイメージを持たせることが大事で、それが将来、困難な場面に直面しても、頑張れる力になるという。

「20年以上、教育カウンセラーをしていますが、厳格な父親の家庭ほど、家出とか非行、暴力、不登校、引きこもりといった問題が起きやすい。細かいことまでガミガミと怒鳴るのが子育てと誤解している親も多いのですが、それは子どもに自分はダメだというイメージを植え付けているだけです」

最後にもうひとつ、忘れてならない父親の役割が「妻の愚痴をきちんと聞くこと」。ほとんどの家庭では、子育ての主役は母親。親身になって聞くことで妻の抱えている重荷を軽くしてあげることも夫の大事な仕事なのだ。

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諸富祥彦

1963年、福岡県生まれ。明治大学文学部教授。20年以上教育カウンセラーを務める。『女の子の育て方』『男の子の育て方』(いずれもWAVE出版)ほか著書多数。

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(明治大学文学部教授 諸富 祥彦 構成=遠藤 成)

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