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アベノミクスのキーマン直撃 -ローソン代表取締役CEO 新浪剛史×田原総一朗【2】

プレジデントオンライン / 2013年8月14日 14時15分

安倍晋三首相が掲げる「アベノミクス」を成功に導くにはアベノミクスが掲げる「三本の矢」の1つである「成長戦略」が不可欠である。産業競争力会議の「論客」が、日本復活の“秘策”を語った。

【田原】少子化対策についてお聞きしたい。いま日本の合計特殊出生率は1.39です。一方、アメリカやフランスは2以上ある。人口減少が続く中で経済成長はありえないと思いますが、この問題はどうやって解決しますか。

【新浪】いま私は2030年までに合計特殊出生率2.1という目標を打ち出してほしいと提案しています。移民もダメ、人口減もストップできないのでは、経済成長はできず、我々の生活も豊かにならないからです。生産性向上のためのイノベーションだけでは、経済成長は実現できません。やはり、“人”は必要です。私は経済成長の目的は、3世代が楽しく暮らせることだと思います。おじいちゃん、おばあちゃん世代だけがよければいいということではなく、お父さん、お母さん、子どもが豊かな生活をおくれる。このサイクルが実現できたうえでの経済成長です。

■高齢者は、農協以上の強敵

【田原】30年に2.1にするために、どういうことをやろうとしていますか。

【新浪】重要なのはダブルインカムを増やすことです。世帯収入を上げるために、女性に働いてもらうのです。

【田原】そこは議論になるところでしょう。世の中には、女性が社会に出て働くから子どもが生まれないのではないかという声も根強くある。

【新浪】じつは統計を見ると、ダブルインカム世帯のほうが全体的に出生率が高いのです。とくに北陸3県は、この傾向が顕著です。なぜかというと、地方では夫婦2人で働いていても、おじいちゃん、おばあちゃんが孫の面倒を見てくれるから。東京は状況が違うので、幼稚園と保育所を一体化する「幼保一体」、もしくはさらに保育施設をつくっていく対策が必要だと思います。

大切なのは、政府でガイドラインをつくり、あとは地域に合わせて任せることです。都市部では横浜市の林文子市長のように待機児童ゼロを目指せばいいし、地方では、敬老の日におじいちゃん、おばあちゃんに紅白まんじゅうを配り、「子どもたちをよく育ててくれました」とお礼をしたっていい。全国すべて一律にやる必要はないです。

先進国ドイツも日本と同じように「少子化」に悩んでいる(AFLO=写真)

【田原】フランスは、先進国でも珍しく、合計特殊出生率を高めることに成功しましたね。なぜうまくいったのですか。

【新浪】フランスは、たとえ結婚を伴わない出産であっても、子どもが生まれたら社会として全部面倒を見てくれる仕組みです。だから安心して子どもを産めるのですが、その半面、社会保障費があまりにも大きくなりすぎて、問題になっています。日本がフランスの真似をするとすれば、他の部分を削って社会保障費とのバランスを取らないといけない。具体的にどこを削るかというと、まことに申し訳ないですが、高齢者の方々に使っている部分でしょう。子どもへの投資は、経済の乗数効果が高いのですが、75歳以上にお金を使うのは乗数効果が低い。その点も考えて社会保障とを見直すべきです。

【田原】でも、高齢者に対する予算の見直しは実現できますか。介護保険は1割負担ですが、これを増やそうとしたら年寄りたちが猛反対して、できなかった。彼らは、農協以上の強敵ですよ。

【新浪】私は社会保障を、その世代の中でやってもらえばいいと思っているんです。世代間でやろうとするから、資産を持っているはずの65歳以上の方々が社会保障費で現役世代に頼るという構図ができてしまう。65歳以上は65歳以上の世代の中で問題解決してくれれば、若い人たちの負担も減り、元気を取り戻すと思います。

【田原】フランスは国が税金を使って出生率を上げましたが、アメリカは、地域のコミュニティやボランティアが子どもたちの面倒を見ます。日本でコミュニティが一番発達しているのは沖縄で、出生率も高い。他でもできますか。

【新浪】東京も昔は町内会が存在して、しっかりした町内会長がいたんですよね。出生率向上のためには、地域コミュニティを含めた社会システムを再構築することが必要です。私が期待しているのが、NPOやNGOの活動です。民主党政権のときに寄付したお金を税控除する仕組み(寄付金控除)ができましたが、これは民主党政権のファインプレーでした。政府が何かするより、NPO、NGOを支援して任せていったほうが、新しい公共性というものができやすいように感じます。

【田原】寄付税制の仕組みをつくったNPO法人フローレンスの駒崎弘樹さんが、こんな話をしていました。寄付金控除ができたのはマスコミに知らせなかったからだ。注目されると当時野党だった自公が反対せざるをえなくなる。静かにしていたから自公の協力も得られて成立した。「拍手なき勝利」だと。

【新浪】なるほど、素晴らしいですね。安倍内閣は長期政権になりますから、民主党政権でよかったものもやってみようよ、というくらいの受容力を発揮すべきです。それに駒崎さんのような若い人たちが活躍したとなれば、彼に触発されて「こんなアイデアもあるよ」という人が出てくるかもしれない。そのほうがお役所頼みから、“共助”の流れに変わっていくのではないでしょうか。これは、国、地方両方の負担軽減にもつながります。

■「一生懸命やる人たちは救うべきだ」

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産業競争力会議の有識者委員の役割

【田原】産業競争力会議で、新浪さんは竹中平蔵さんや三木谷浩史さんと一緒に新自由主義を強調しているといわれています。

【新浪】2人があからさまに新自由主義を強調しているとは思えませんが、いずれにせよ、私の基本にあるのは、「一生懸命やる人たちは救うべきだ」ということです。そして、一生懸命やって失敗した人は再起できるようにサポートしてあげるべきです。逆にいえば、何もしないでのんびり人を頼ってばかりいる人は、最低限のサポートでいい。私は、新自由主義のすべてに、もろ手を挙げて賛成していませんよ。

【田原】なるほど、小泉改革は競争を煽ったけど、セーフティネットがなかった。自由競争はいいけど、負けた人間をどうするのかという点で、新浪さんの考えとは違うということですね。

【新浪】そうですね。日本はアメリカと違います。日本は、一緒に汗をかいた人なら結果が悪くても救ってあげる国でなくてはいけないのではないでしょうか。これはとても重要な点です。

【田原】もう1つ。僕は自民党をあまり信用していません。もし参議院選挙に勝ったら、改革を掲げながらも中途半端にしかやらないと思う。先日、安倍さんに聞いたら(改革を)「やる」といっていたけど、改革のために産業競争力会議はどうすればいいか。

【新浪】まず産業競争力会議の運営をこのまま続けていくことが大切です。ただ、全体のストラクチャー(構造)は変えたほうがいい。いまは会議の種類が多すぎて、内容もかぶっています。理想は、マクロ政策を議論する経済財政諮問会議を最上位にして、その下にミクロの具体的方針を議論する産業競争力会議が入り、さらにその下に規制改革会議や、グローバル人材の育成を論議する教育再生実行会議など、個別のテーマの会議がつらなるヒエラルキーです。このような形にすれば、もっと機能的になるかと思います。

【田原】産業競争力会議では有識者委員同士で意見が対立していますね。安倍さんは「もっとケンカしてほしい」といっていたけど、これはどうですか。

【新浪】私は、それでいいと思います。みんなが同じ金太郎飴のような意見では、会議をする意味がない。私は、独立取締役の議論においては、経団連と違う意見です。自分が背負っているのは経済団体ではなく、「For the country」。新陳代謝を促すにはコーポレートガバナンスが重要で、そのためには独立取締役の義務化が必要です。そこはしっかりと議論したい。むしろ問題は、議論した後に、何も決まらないことでしょう。大切なのは、必ず結論を出して前に進むこと。それには、政治的な決断が不可欠です。

【田原】対立の中から、安倍さんが何を選択し、決断するのかが大事ということですね。成長戦略がどのようなものになるか、注目しています。頑張ってください。

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新浪剛史 株式会社ローソン代表取締役CEO
1959年、神奈川県生まれ。県立横浜翠嵐高校卒。81年慶應義塾大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。91年ハーバード大学経営大学院修了(MBA取得)。2002年3月ローソン顧問就任。02年5月同社社長執行役員。05年社長兼CEO。13年5月から現職。

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(サントリーホールディングス 代表取締役社長 新浪 剛史、ジャーナリスト 田原 総一朗 村上 敬=構成 宇佐美雅浩=撮影 AFLO=写真)

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