シンガポールで密着――ジム・ロジャーズの24時間
プレジデントオンライン / 2013年8月13日 14時15分
2007年、アジアの可能性に賭け、アメリカからシンガポールに移住した世界3大投資家の1人、ジム・ロジャーズ氏。家族4人で暮らす自宅を訪れ、その1日を追ってみた。
日本株が記録的な値下げを記録した5月末、ジム・ロジャーズ氏の邸宅を訪れた。ジョージ・ソロス氏と一緒に立ち上げたファンドから37歳でリタイア、バイクと車で世界を2度1周したロジャーズ氏が、米国を離れて居住することを選んだ場所はシンガポールである。2年ほど居住している家は賃貸で、今、購入物件を探している最中だという。
中庭のプールを望む広々とした部屋から見渡すと、ロジャーズ氏はプールサイドでエクササイズに励んでいるところだった。ほどなく彼は額の汗を拭き拭き、出迎えてくれた。
「よく来てくれたね。今日のインタビューはエクササイズを続けながらにしたいと思うんだけど……」
70歳になっても朝のエクササイズを欠かさないロジャーズ氏は、日本でインタビューを受ける際もホテルのジムを希望することが多い。まさに「時は金なり」。複数のことを同時にこなすのが彼の好むやり方なのだ。
朝は6時起床。朝食後、娘2人を自転車に乗せて、800メートルほど離れた学校にそれぞれ送っていく。8時頃~10時頃まで、エクササイズをしながらラジオを聴き、パソコンを開いてニュースやメールをチェック。ヘッドフォンをつけて電話インタビューを受けながら運動することもあるという。
アベノミクスなど、日本と世界の投資環境における最新状況についてたっぷり語ってもらった後、ロジャーズ氏はバイクから降りてシャワーを浴びにいく。着替えが済んだところで、「下の子を自転車で迎えにいくよ」。
ほどなく次女のベイビー・ビーちゃんが幼稚園から戻ってきた。シンガポール生まれだ。その後、ランチタイムを挟んで、長女のハッピーちゃんも小学校から戻ってくる。
子供部屋には英語と中国語で「窓」「ドア」と書いた紙が貼ってある。長女がニューヨークで生まれたときから、中国人のベビーシッターを雇い、中国語だけで話しかけてもらうようにしてバイリンガルに育てあげた。当時ニューヨークではその教育方針が有名になり、多くのアメリカ人がそれに倣ったため、中国系ベビーシッターの時給が上がったという話も聞いたことがある。今も中国人家庭教師とシッターをつけ、2カ国語で生活させている。
午後、2人の勉強の時間。「小蜜蜂――」と自分の愛称を中国語で書くビーちゃんに、家庭教師の先生は「難しい字がちゃんと書けたわね」と中国語で褒める。「私は全然、読めないんだけどね」と、傍らで見ていたロジャーズ氏は苦笑いしていた。
この日は夕方から自宅で会議があった。それなりに仕事は続けているが、今のロジャーズ氏は家族との時間をなるべく取りたいと思っている。朝から晩まで投資漬けだったという30代の頃なら考えられなかった生活だ。
彼は別れ際、娘たちにこう言った。
「さあ、彼女に日本語で『ありがとう』ってお礼を言ってごらん」
今、ロジャーズ氏にとっての1番の投資対象は2人の娘たちだという。多くのお金を残すのではなく、自力で人生を切り開いていける女性に育てることができたなら、自分はすべてを失っても構わないのだと。
■ジム・ロジャーズの1日
10:00●ラジオを聴きながらリサーチ、エクササイズ、そして取材も
8時頃からエアロバイクに乗って運動。取材も一緒に受ける。(写真上)。
愛用のラジオとウエートトレーニング用のダンベル(写真左下)。パソコンをバイクの上に置きリサーチも同時に行う(写真右下)。
11:00●オランダ製の自転車で次女を幼稚園へ迎えにいく
エクササイズとリサーチが終わったら、下の娘のベイビー・ビーちゃんを自転車で迎えにいく。
自転車はオランダ製で「おそらくシンガポールでは1台だけだ」とロジャーズ氏。
12:00●ランチミーティングへ出かける
撮影を一時中断して、おなじみの蝶ネクタイを締め直し、ややあわただしくランチミーティングへ出かける(写真左)。シンガポールにおける最新のランドマークホテル、マリーナベイサンズの、世界一高い場所にあるプールからは市内の景色が一望できる(写真右)。
13:00●ランチから戻ったら、上の娘を学校まで迎えにいく
ランチから戻ったら、上の娘のハッピーちゃんを同じ自転車で迎えにいく。下の娘が一緒に乗っても十分な大きさの籠がついている(写真上)。
蝶ネクタイと並ぶトレードマークのサスペンダーにはチャートの模様(写真左下)。
ベイビー・ビーちゃんは犬のベラとも仲良し(写真右下)。
14:30●娘は2人ともバイリンガル。家庭教師と中国語の勉強を
米国に居住している頃から、ハッピーちゃんに中国人のベビーシッターをつけて英中バイリンガルに育てた。今では2人とも完璧な中国語を話し、漢字も書くことができる(写真上)。
家のそこかしこに英語と中国語が両方貼ってある(写真左下)。「若い頃、子供は要らないと思ってたが、今は可愛くて仕方がない」(写真右下)。
(プレジデント編集部 木下 明子 宇佐美雅浩=撮影)
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