「もっと自信を持っていいんです」-猪瀬直樹
プレジデントオンライン / 2013年9月27日 11時15分
いのせ・なおき 1946年、長野県生まれ。県立長野高校、信州大学人文学部卒。87年『ミカドの肖像』で第18回大宅壮一ノンフィクション賞受賞。2002年6月、道路関係四公団民営化推進委員会委員に就任。07年6月、東京都副知事。2012年12月、東京都知事に就任。
■猪瀬直樹(東京都知事)
2020年オリンピック・パラリンピックの開催地に東京が決まった。招致活動の先頭に立ってきた招致委員会会長の猪瀬直樹・東京都知事は歓喜の涙を見せた。
「希望の灯をつくることができた。7年後にオリンピック・パラリンピックがくる。東京の存在感を世界に示すことができる」
意志の強い人である。運の強い人でもある。「勝つと思わないと(招致レースには)勝てない」とずっと口にしてきた。
粗野なモノ言いゆえ、時に誤解を招くこともある。4月のニューヨーク・タイムズ紙での「イスラム諸国はけんかばかりしている」との失言で猛批判を浴びながらも、招致への意欲は衰えなかった。今後は国際オリンピック委員会(IOC)の規定を遵守し、他都市の立場を尊重すると言い続けた。
猪瀬知事にとっての悲しみは、7月21日、「二人三脚」で招致活動に取り組んできた最大の理解者、妻のゆり子さんを「悪性脳腫瘍」で喪ったことだった。猪瀬知事は亡き妻の思いを背負ってIOC総会のブエノスアイレスに乗り込んだ。
投票の日が、奇しくもゆり子さんの四十九日だった。勝負の最終プレゼンテーションでは、ゆり子さんの写真の入ったペンダントを胸に忍ばせて登壇した。
「妻が応援してくれたと思っている。気持ちは今も妻と一緒」。開催都市の発表の瞬間は、ペンダントをぎゅっと握りしめていた。
長野県出身。信州大学時代は学生運動のリーダーを務めた。妻とはその大学時代、知り合った。作家として活躍し、2007年から石原慎太郎前知事の下で副知事を務めた。昨年12月、石原氏の突然の辞任を受け、都知事に就任した。
「スポーツ好きのリーダー」を演じてきた。3年前、メタボ対策として自宅周りのジョギングを始め、昨年3月には東京マラソンを走るまでになった。今では毎日のようにジョギングし、月間で約80キロも走る。
7年後の東京オリンピック・パラリンピックに向けた準備が始まった。「誇り」「自信」と猪瀬知事は繰り返した。
「1964年の時はみんな誇りを持っていたんです。こんど(2020年に)オリンピック・パラリンピックを運営するということは、都民や国民が誇りを取り戻すことになるのです。もっと自信を持っていいんです」
都民と共に7年後に向けて、猪瀬知事はまた走りだす。亡き妻の思いも一緒に。
(ノンフィクションライター 松瀬 学 松瀬 学=撮影)
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