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ボーナス:主要40社ランキング、トップはマツダの31%増

プレジデントオンライン / 2013年11月22日 13時15分

自動車の好調さが際立つ年間ボーナスの伸び率

今年の春闘は安倍政権の賃上げ要請も手伝い、ボーナスの引き上げに関心が集中した。いち早く要請に応じたのがローソン。新浪剛史社長が20代後半から40代の全正社員約3300人を対象に年収を平均3%、金額ベースで15万円をボーナスに上乗せすることを打ち出した。

以後、好調の自動車産業を中心に満額回答が相次いで、連合の集計(5月8日)では月数平均は前期比0.21カ月増の4.57カ月。金額は約4万円アップの148万円だった(1650組合)。また経団連が5月30日に発表した今夏ボーナスの第1回集計での平均妥結額は、前年比7.37%増の84万6376円となり、バブル経済末期の1990年の同8.36%増に次ぐ伸びを示した。

しかし、賃上げがボーナスにシフトしたといっても、全体として見れば“金一封”程度の小ぶりな伸びにとどまった。業種別では、円安を背景に輸出が好調な自動車の大幅増に対して、電機・鉄鋼の不振が際立った。とくに自動車は“1人勝ち”といってもよい。

トヨタは昨年より27万円上回る205万円。5年ぶりの200万超えとなった。本田技研労組は自動車のなかでは最も多い月数(5.9カ月)を要求し、最高の217万1000円を獲得。日産も昨年実績を0.2カ月上回る204万1000円だった。

昨年実績は3.3カ月と低迷していたマツダは5カ月を要求。満額とはならなかったが、前期比31%増の154万7000円となった。超低燃費技術スカイアクティブの搭載車の売れ行き好調が大幅な伸びにつながった。自動車の好調は部品メーカーにも恩恵を与え、デンソーも前期比8.47%増の192万円の満額回答だった。

■構造不況直面の鉄鋼は長期低落へ

ところが同じ部品でも自動車向けの鋼材を供給している鉄鋼業界は相次いで昨年を下回った。自動車と並んで春闘の牽引役の鉄鋼大手のボーナスの200万超えは珍しくなかった。リーマン・ショック前は新日鉄住金、JFEスチール、神戸製鋼所の大手は自動車をしのぐ勢いだったが、その後の市況の低迷で長期低落傾向に入った。神戸製鋼所の年間ボーナスは前期比13.59%マイナスの89万円で、100万円の大台を割った。

鉄鋼不振の最大の原因は中国企業を中心とする生産過剰による鋼材価格の下落だ。中国市場で溢れた鋼材が世界に流出し、世界の鉄鋼業界は構造不況に直面している。神戸製鋼所の鉄鋼部門は2013年3月期に502億円の経常赤字を計上し、すでに一部の高炉を休止するなどの検討に入っている。

製紙業界も業績不振で軒並み下がっている。国内のパルプ生産量は12年まで4年連続で1000万トンを割り込み、ペーパーレス化もあって国内消費量も低迷の一途をたどっている。このままジリ貧状態が続くようであれば、業界再編も起きかねない情勢だ。

そして、経営の立て直しでボーナスどころではないのが電機業界だ。13年3月期決算で7650億円の赤字を計上したパナソニックはボーナスの2割カットを組合側に提案している。シャープも業績不振で人件費のカットが迫られる中、夏のボーナスは1カ月分の支給で合意した。1カ月分は約31万円。一律2万円の給与カットに加えてこの金額では生活水準の低下は免れない。

また、ボーナスでは常に電機のトップに君臨していたソニーの凋落にも歯止めがかからない。業績不振とはいえ、11年は電機トップの約200万円をキープ。だが、12年は155万2000円と大幅に低下し、今期は140万円台。三菱電機と並ぶ水準にまで下がり、高収入、高ボーナスと謳われたソニー神話は完全に崩壊した。

電機業界で唯一好調さを維持しているのが、コスト管理とインフラビジネスへの集約が功を奏した日立製作所だ。前期比1.46%増の5.35カ月、金額で160万3930円。1991年以来の高水準だが、社員は手放しで喜んでいるわけではない。同社の部長職の社員は「リーマン・ショック後の業績不振でボーナス1カ月分ももらえない年もあったし、厳しい生活を強いられてきた。もっともらってもいいと思うが、コスト管理は今も続いており、業績が伸びても給与も含めてボーナスも上がることはないだろう」と語る。

■業績連動採用は大手で3割超

ところで、今ではボーナスは会社業績が反映され、昔のように「給与の何カ月分」という固定額をもらえる時代ではない。とくに会社業績や部門業績の反映度が高い管理職層は業績が下がると一気に下がり、赤字にでもなれば、ボーナスゼロという会社もある。だが管理職と違って非管理職の組合員層は最低額が保証されている。

現在、ボーナス交渉をしなくても済む「業績連動方式」を採用する企業が増えている。あらかじめ決めておいた計算式に経常利益などの業績数値をあてはめて賞与の支給額が自動的に決まる方式で、別名「デジタル方式」とも呼ばれる。1度計算式を決めてしまえば経常利益の増減によって支給額が決まり、その都度労使で交渉をする必要もない仕組みなのだ。

JFEスチールの場合、経常利益ゼロの場合の最低ボーナス額を120万円として、前年度の経常利益が100億円増減するとボーナス額が3万円増減する方式を導入している。組合員は赤字でも120万円程度は支給されるのだ。

また、電機のパナソニック、東芝、富士通、NECをはじめ大手企業の30%超が業績連動方式を導入。赤字や業績不振に苦しむ電機メーカーの場合、年間4カ月分のボーナスを保証することにしている。電機大手の賞与基本給は約30万円なので、年間120万円のボーナスは保証される計算だ。だが、パナソニックは組合員を含めたボーナスの2割カットを組合側に提案しており、その金額すら下回る可能性もある。

最低保証のある非管理職層はまだいいほうで、業績不振のしわ寄せをもろに受ける管理職のボーナスは悲惨の一言に尽きるだろう。

リフレ政策を推進する安倍政権はボーナス増で消費の活性化を期待したいところであるが、全体の平均は微々たる増加にすぎない。また、「物価の上昇に最も影響するのは所定内給与の引き上げであり、賞与を少し引き上げても影響しない」(民間エコノミスト)という指摘もあるだけに望み薄といえる。

気になるのは原料費や燃料費の高騰だ。輸入小麦を扱う日清製粉グループ本社のボーナスも下落。今後、鉄鋼業界はもちろん、ガソリンの値上がりが国内自動車販売にも影響を与える可能性もあり、1人勝ちだった自動車業界の先行きも楽観できそうにない。

(ジャーナリスト 溝上 憲文)

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