「隣にいても気づかない」地味消費 -資産10億級 極上リッチの鉄則【5. マネー】
プレジデントオンライン / 2014年2月7日 10時45分
巨大な富を築き、それを永きにわたって継続していける真のお金持ちたち。成功するための仕事との向き合い方、意思決定や思考のパターン、代々続けていくための子供の教育とは、どのようなものなのだろうか。富裕層の専門家3人が、彼らの素顔を明かす。
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金銭感覚やお金に対する哲学について、橘木教授は「いかにもお金持ちらしい消費行動をとるのはプチ富裕層。超富裕層は意外に地味で庶民的です」と証言する。船井総研の小林氏も同じ見方だ。
「プチ富裕層は、ビジネスを広げ将来的に資産規模を大きくするために、自分のブランド力を高めていくことに熱心です。そのため、消費にしても趣味や慈善活動にしても非常に派手で、『見られる』ことを意識します。クレジットカードのブラックカードを所持して、仲間内で見せびらかすのもプチ富裕層ならではの行動です」(小林氏)
一方、超富裕層の目的は資産の急拡大ではなく、次世代にいい形で引き継ぐことだ。そのためには「見せびらかす」よりも「目立たないようにする」ほうが好都合。だから超富裕層には「街で会ってもそれとは気づかないような人が多い」(小林氏)という。
「移動するときも高級車に乗るのではなく、ユニクロのシャツを着てタクシーを拾ったり、地下鉄に乗ったりしています。ただ、当然ですが財力はあるので、興味を持ったことや好きなことに対しては集中的にお金をかけます。たとえば、海外の滅多に行けないような場所へ1カ月くらい旅してきたとか、趣味に対して尋常ではない金額を投じたとか、そういったことはよく聞きますね」
とはいえ日常生活が質素であれば、電車で隣り合わせても気づくことはないだろう。それどころか「あなたの同僚にも超富裕層の子弟がいるかもしれません」と小林氏は言う。超富裕層といっても一族全員が家業に従事しているわけではなく、多くは一般企業で働いているからだ。
「商社や保険会社やマスコミには、資産家の子弟がコネ入社していることがありますから、気づかないまま超富裕層と一緒に働いているのかもしれません」
いずれにせよ、超富裕層はお金持ちらしい姿をしているわけではなく、メディアにもほとんど登場しない。社会的な活動をするときも、表に出るのではなく「フィクサー的な動きに終始する」(小林氏)。消費でも、社会貢献でも目立つことを好むプチ富裕層とは対照的な、非常に「見えにくい」存在なのだ。
プチ富裕層と超富裕層とでは投資傾向も正反対だ。小林氏の調査によると、「プチ富裕層は攻めの運用を好み、超富裕層は守りの運用を好む」。プチ富裕層の場合、「拡大」をテーマにしているため、金融資産の構成比を見ると株式の比率が高いという。
「あるプライベートバンクの顧客データを見ると、積極的な方だと65%、保守的な方でも25~45%を株式で保有しています」(小林氏)
一方、超富裕層は……。
「金融資産では債券、主に日本国債の比率が高く、80%は債券で保有しているという人も珍しくありません。不動産の保有比率が高いのも超富裕層の特徴で、マンションなら部屋単位ではなく1棟まるごと買いますね」(小林氏)
国債や不動産の比率が高いということは、それだけ国家や地域経済との結びつきが強いということだ。
「逆にいえば超富裕層は『逃げられない』。だから、この人たちは地域への貢献意識が強いのです」(小林氏)
海外への投資を一切しないわけではないが、超富裕層の事業は国内で収益をあげている場合が多いため、華僑風に海外へ軸足を移す動きにはなりにくい。だが、ルート・アンド・パートナーズ代表取締役の増渕達也氏によると、3.11以降は空気が変わってきたという。
「超富裕層のなかにも、会社を売ってキャッシュ化する人がちらほら出ています。日本における会社経営ということに、リスクを感じ始めているのだと思います」
富裕層の世界も、大きな変革期を迎えているのだ。
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小林昇太郎
立教大学大学院修了(経営学修士)。2009年、船井総研内に富裕層ビジネス研究会を設立。国内だけでなく東南アジア、香港、中東などからの入会も多く、そこからいくつもの新事業を立ち上げている。著書に『ビリオネアビジネスの極意』。
橘木俊詔
1943年生まれ。73年米国ジョンズ・ホプキンス大学大学院博士課程修了。仏米英独で研究職、教育職を、日銀、郵政省などの各研究所で研究職を歴任。京都大学教授を経て現職。共著に『日本のお金持ち研究』『新・日本のお金持ち研究』がある。
増渕達也
1992年、東京大学卒業後、電通に入社。2000年退社。02年セブンシーズ・アンド・カンパニーを設立。06年ルート・アンド・パートナーズを設立。富裕層のマーケティングを手がけ、7000人以上の富裕層に会ってきた。
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(プレジデント編集部 面澤 淳市 永井 浩、浮田輝雄=撮影)
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