贈与税:孫への教育資金「使い残し」には重税が
プレジデントオンライン / 2014年3月30日 14時15分
■相続時精算課税の利用にはご注意を
個人金融資産の約6割を保有する高齢者から、消費が活発な現役世代への資産の移転を促し、経済活性化につなげる――。これが平成27年1月1日より改正される新しい贈与税の狙いなのでしょう。
改正のひとつは、税率構造の変更(図参照)。大雑把に解説すれば、「少ない額の贈与は減税」「多い額の贈与は増税」になります。
20歳以上の人が親や祖父母などから贈与を受けたとき、贈与税の課税対象となる金額が300万円超~3000万円以下の部分は税率が下がり、逆に、4500万円超の部分は税率が上がります。
なお、贈与税について暦年課税(財産をもらった人が1年間に受けた財産の合計額に対して課税)という制度の場合、基礎控除が110万円あるので、贈与された金額が110万円以下なら申告は不要。110万円超は納税が必要になります。
今回の改正により、例えば、20歳の子供が父親から600万円贈与を受けた場合、現行は(600万円-基礎控除110万円)×税率30%-控除額65万円=82万円の贈与税ですが、改正後は(600万円-基礎控除110万円)×税率20%-控除額30万円=68万円と14万円負担減になります。
逆に、贈与額が4500万円超だと、現行の税率は50%ですが、改正後は55%と高くなります。
改正の2つ目は、もうひとつの課税方式「相続時精算課税」の適用対象者を拡大すること。
この課税制度は、贈与者から受けた財産について、2500万円までは非課税(2500万円超の部分は20%の税率で贈与税がかかる)であるものの、その贈与者が亡くなった場合には、贈与財産の贈与時の価額を相続財産の価額に合算して、相続税を課すという制度。
つまり、贈与時には贈与税を課さない代わりに相続時にまとめて課税する制度ということです。今回、贈る人の年齢を現行の65歳以上から60歳以上へ、また贈られる人の年齢を20歳以上の子から、20歳以上の孫も加えました。
対象者が拡大されたとはいえ、この相続時精算課税制度は慎重に利用する必要があります。なぜなら、相続時精算課税制度を一度利用してしまうと、前出の暦年課税(年間110万円までの贈与は非課税)が利用できなくなってしまうからです。特に、財産が多く相続税が高くなりそうな富裕層はこの制度の利用について、相当慎重に検討する必要があるといえるでしょう。
改正の3つ目は、30歳未満の子や孫に対する教育資金の一括贈与を1500万円まで非課税とするというもの(平成25年4月~27年12月)。祖父母など(贈与者)が信託銀行に金銭信託の預け入れをします。子・孫は、学校生活で必要な入学金や授業料など、また学習塾、予備校といった学校外の教育費用の支払いに預け入れられたお金を使うことができます。
なかなかいい仕組みですが、落とし穴もあります。子・孫が満30歳になったときに贈与したお金が残っていたら、その金額に贈与税がかかってしまうのです。
例えば、8000万円の財産を持つ祖父(法定相続人は3人)が孫に1500万円の教育資金を贈与したけれど、孫は進学をすることなく30歳時点で1000万円を使い残したとします。
この制度により、祖父は、自らの相続財産を1500万円減らすことになり相続税を約160万円節約できる。しかし、孫の使い残しの1000万円には贈与税が約180万円。結局、20万円弱もの損になるのです。子供や孫の進路は親たちの思い通りになるとは限りません。孫のためにもなり、節税のためにもなると思って行った教育資金の贈与で結果的に税負担増ということもあるのです。
(税理士、中小企業診断士 吉澤 大 構成=岡村繁雄)
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