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子どもの教育費、最低限でいくらかかるのか

プレジデントオンライン / 2014年3月25日 8時45分

私立幼稚園→公立の小・中・高へ進んだ場合の教育費の内訳

■「子どもにかかる教育費は1人1000万円以上」という脅し文句は本当か?

4月から消費税率がアップするため、家計の見直しをしようという機運が高まっている。しかし、家計の中で聖域化しやすいのが子どもの教育費だ。ここに切り込むために、どんなところに教育費がかかっているのかを分析して、冷静に検討してみたい。

一般的には「子どもにかかる教育費は、1人1000万円以上」というのが定説になっている。教育費の記事では脅し文句といってもいい。しかし、文部科学省の「平成24年度 子供の学習費調査」と日本学生支援機構の「平成24年度 学生生活調査」によると、幼稚園から大学まで全部公立で769万円、全部私立なら2205万円かかる計算になるので、あながちウソというわけでもない。

では、「1人1000万円以上の貯蓄がないと子どもを大学まで行かせられないのか?」というと、答えは「NO」。教育費は1回で1000万円払うものではなく、20数年かけて払っていくものだからだ。毎月の家計費の中から払う授業料、給食費やお稽古事の費用などを20数年積み上げていった額がこのくらいになるという試算にすぎない。

■もちろん、私立より公立のほうが授業料が安い。
幼稚園から高校まで288万円なら、何とかなるか?

どうすれば、この積み上げた教育費の額が小さくなるのかを考えてみよう。もちろん、私立よりは公立のほうがかかるお金は少ないから、基本的には公立の学校を選んだほうが教育費は減らせる。

幼稚園は私立の学校数が62.2%と公立より多く、8割以上の子どもが私立の幼稚園に通うため、ここは私立でも仕方がないだろう。(文部科学省「平成24年度 学校基本調査報告書」より)。しかし、小学校、中学校は公立が圧倒的に多く、あまり教育費をかけずに義務教育が受けられる(小学校のうち私立の学校数は全体の1%、同じく中学校は7.2%しかない)。高校も都市部以外の地域では、公立が多いはずだ(高校のうち私立の学校数は27.1%)。

幼稚園だけ私立、あとは高校まで公立に通う場合をモデルケースとして、かかる教育費を考えてみよう。私立幼稚園に通う場合、学校教育費と学校給食費の合計は年間36.7万円。月に3万円程度の教育費がかかる(自治体が幼稚園就園奨励費補助金を出している場合も)。公立小学校に通う場合は、年間9.7万円。月額8000円程度、公立中学校は、年間16.8万円で月額1万4000円程度。さらに平成22年度から公立高等学校授業料無償制が導入され(2014年4月以降入学の生徒に関しては、所得制限あり)、公立高校の場合は、学校教育費は年間23.1万円と月額1万9000円程度ですむ(図表参照)。

ここまでの計算をしてみよう。このモデルケースでそれぞれの通学年数をかけると、幼稚園から高校までの15年間で合計288万円(学校教育費と学校給食費の合計額)。意外と何とかなりそうな額なのではないだろうか。

■気をつけたいのは、
際限なくつぎ込みがちなお稽古事の費用や学習塾代

幼稚園から高校までで気をつけたいポイントは、お稽古事の費用と、学習塾代だ。文部科学省の調査の中では「学校外活動費」とされるこれらの費用は、私立幼稚園で年間12万円、公立小学校では年間20.9万円、公立中学校では年間28.3万円、公立高校でも年間15.6万円かかっている(前記図表参照)。時期によっては学校教育費を上回る金額の場合もあるほどだ。これらを幼稚園から高校まで足すと、293.1万円。先ほど計算した学校にかかるお金より多い。行く学校が決まれば学校教育費は膨らみようがないが、お稽古事の費用や学習塾代は、かければかけるほど、さらにかかっていく性質のものであることを肝に銘じよう。

子どもの将来が不安、ほかの子よりも優秀であって欲しい、子どもの可能性を伸ばしてあげたいなどと考えたら、できる限りのことをしてあげたくなるのが親心というもの。しかし、家計を考えると、際限なくかけられるものでもない。また、お金をかけるポイントを間違えると、学習塾代にお金をかけ過ぎて、せっかく合格しても進学のためのお金が残っていないなどという本末転倒なことにもなりかねない。親は子どもの将来の進路をある程度は見越して、かけるべき時期を見誤らないようにしたい。

ときには親が「お金をかけるのはここまで」と決めて、その範囲で子どもがやりたいこと、やるべきことを選択させることが必要だ。消費税率アップを理由に、お稽古事の費用や学習塾代も確実に値上げされる方向にある。教育費はいくらかかるか、ではなく、いくらかけるかで大きく変わる。「親がかけるお金を決めること」が教育費を減らすいちばんの方法なのだ。

■学校教育費と学習塾代のかけ方のバランスが難しい

さらに複雑なのが、学校教育費と学習塾代のかけ方のバランス。中学のときに学習塾代をかけたほうが、優秀な公立高校へ進学できる、高校は面倒見のよい私立に行かせたほうが学習塾代がかからずにすむ、高校時代に学習塾代をかけたほうが浪人せずにすむ、などいろいろな考え方があるし、私立高校でも周りが学習塾に行くのがあたりまえの学校で、さらに教育費がかかったという例もある。どうするのが最終的にはよかったのかは、なかなか判断がつかない。

最近は、親の側もできるだけ費用をかけずにレベルの高い教育を受けさせたいと思っている人が多く、中高一貫の公立校の人気が高まっている(中高一貫の公立校の入試対策のために学習塾に行く必要があるのだが)。また、最近CMで耳にする「公立高校に強い」という塾のキャッチコピーは、親の気持ちに刺さるはずだ。

■教育費の半分以上は、大学に通わせるお金。
高校卒業までを親の役目と言い渡す

教育費に占める金額の半分以上は、大学進学の際にかかるお金だ。国公立に進んでも、4年間で269万円。私立なら528万円かかる。積み上がる教育費を劇的に減らすには、高校卒業までを親の役目と子どもに言い渡し、大学や専門学校に行くお金は自分で何とかしなさいという方法がある。これで半減だ。

しかし、今どき「苦学生」という言葉は死語のようだ。親が突き放したら、がんばるどころか何もしなくなる場合も多いので、なかなか親も荒療治には踏み切れない。今では何から何まで親が出してくれるという大学生があたりまえのようだが、それでいいのか?

すべてを子どもに払わせるのは難しいという場合は、入学金と1年目の授業料は親が払い、あとは奨学金などで工面させることもできる。一人暮らしをして学校に通う場合は、学費か生活費のどちらかは自分で何とかするという負担の仕方もある。自宅の場合は、お小遣いやサークル活動費くらいは自分でアルバイトしなさいといってもいい。

日本学生支援機構の奨学金を借りて、返済が滞るケースが増えて問題になっているので、借りすぎには注意が必要だが、すべてを親がかりで通える子どもと、自分で授業料を工面して通う子どもでは、学ぶ姿勢にも差が出てくる気がするのだが。

■「教育費はかければいい」というものでもないので、難しい

とにかく教育にお金をかければいい学校に入れたり、いい仕事につけるとは限らないところが難しい。かえってこれしかかけられないと親がいった家庭の子どものほうが、背水の陣でがんばって勉強や就職活動をする場合も多い。

ひきこもりやニートの家庭のマネープランニングの支援をしているファイナンシャルプランナーの畠中雅子さんは、「教育費がかさみ、慢性的に家計が逼迫している家庭は多い。余裕がある家庭はいいけれど、余裕がない家庭が同じことをすると、老後の資金不足になるなどのリスクがあります。しかも、“教育費に糸目はつけない”という家庭で育った子どもほど、ニートになりやすい傾向があります」と証言。「お金についての教育を行うのも親の役割。子どもをニートにさせないいちばんの近道です」と続ける。

不登校、引きこもり、非行、いじめ、落ちこぼれ、浪人、留年、就職浪人、ニートなど、教育費をかけても避けることができない問題も多い。

この春、また改めて子どもと向き合っていくことを心に誓い、新学期を迎えよう。

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フリーライター 生島典子(いくしま・のりこ)
投資信託の運用会社、出版社勤務を経て独立し、2004年よりライター・編集者として活動。子育て、家計、住まい、働き方などが主な執筆テーマ。好きなことは、出産と住宅ローン。3人の子どもを助産院で出産した経験あり。

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(フリーライター 生島 典子)

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