「LGBT」ビジネス市場を見よ
プレジデントオンライン / 2014年5月19日 13時15分
■アメリカ約77兆円、日本約6兆円!
その推計市場規模は……アメリカで約77兆円、イギリスで約7兆円、そして我が日本でも約6兆円で、世界全体では軽く100兆円を超えるとされる。今、世界のビジネス界でもっとも注目を集めているのが、LGBT市場なのである。
LGBTとはセクシュアル・マイノリティ(性的少数者)を示す言葉で、L=レズビアン(女性同性愛者)、G=ゲイ(男性同性愛者)、B=バイセクシュアル(両性愛者)、T=トランスジェンダー(性同一性障害など)の総称である。
2012年2月に電通総研が行ったインターネット調査(約7万人へのスクリーニング調査)によると、日本の人口に占めるLGBTの割合は、約5.2%。20人に1人以上はLGBTということだ。
電通総研消費者研究部の大屋洋子部長は、こう話す。
「LGBT人口が全体の4~6%という数字は以前から各調査で出ていました。左利きの人や血液型がAB型の人(いずれも人口約7%といわれる)に近い数字ですから、当然、企業や学校に一定数がいることになります」
最近は、国内外の芸能人や有名人でカミングアウト(自分のセクシュアリティを公にすること)する人が目立つようになり、その存在感は増している。
マイノリティというよりもはや「隣人」となった感のあるLGBTの実態をデータに基づき見ていくことにしよう。
まず、前提として知っておくべきはLGBTという言葉はあるものの、彼らをひとくくりにはできないということだ。L・G・B・Tそれぞれのセクシュアリティがあるのはもちろんだが、表の「LGBTの出現率」によると、本人が「自覚」する時期には段階がある。
「例えば、『もしかしたら僕は女の子になりたいのかも』などと気づきはじめるのが13歳から15歳頃の思春期、『絶対そうだ』と確信する年齢のピークが二十歳前後。一番性的なことに向き合う時期ですね。そして、次にピークを迎えるのが、実は40代なんです。40歳以上になって自覚する人が1割以上いますが、この年齢になると既に結婚をしている人も多い。なんとなく付き合って結婚して子どもも授かったものの、40代に入ったころに『何かが違う』と思い始め、離婚をされる人もいるようです」(大屋氏)
つまり、まだ「自覚」していない潜在的なLGBTの人口はもっと多い可能性があるということかもしれない。
■ 老後の備えのため貯金に一生懸命。その心は?
同総研では、LGBT市場の消費傾向も調査しており、そこからは彼らのライフスタイルも浮き彫りになっている。彼らはSNSなどネットでのコミュニケーション率が一般より高いなど情報感度が鋭く、可処分所得も多いゆえ、企業はその対応を誤ると 業績に大きく影響する可能性があるのだが、その事実に気づいている日本企業は多いとは言えない。
消費傾向で、彼らに特徴的な事例をあげよう。
例えば、一般の異性愛者(いわゆるストレート。ノンケとも言う)よりも「家飲み」や「ペット所有率」が高い。
「全体的に、家の中のことにお金をかける傾向があります。例えば、家具やファブリックなどのインテリア、家で飲むためのアルコール飲料や食材、映像、音楽、ゲームソフトなど。アフター5などは外食より家飲みというライフスタイルが多いと思われます。また、旅行に関しては、まだLGBTへの理解が進んでいない国内では、男性同士がホテルにチェックインしづらいといった事情があります。そのためか、同じLGBTでも男性のほうが海外旅行の支出額が高くなっています」(同)
とりわけ、トランスジェンダーのなかでも見た目が男性で心は女性という場合(もしくはその逆の場合)、トイレや入浴シーンなどで何かと不都合が生じる。となると、仲間と気兼ねなく過ごせるのは、やはり家。その家に心地よさを求めて投資するのは当然のことなのだろう。
一方、蓄財観念はどうか。
「LGBTの方は、養子縁組をしない限り子どもがいない可能性が高いので、持ち家や土地を買って子どもに資産を残す必要がない分、自分への投資がしやすいと言えるかもしれません。一方で、老後のための貯蓄意識は高いとも言えるでしょう。残念ながら、日本では(同性による)結婚という形が認められていないので、今のパートナーがずっとそばにいて助け合える保障もないし、老後の面倒を見てくれる子や孫もいない場合は、備えが必要となってきます」(同)
LGBTだからこそ求める商品やサービスがある。次回(5/20公開)は、そこにしっかり早くから目を向け活動している国内外の企業についてレポートしよう。
(ライター 桜田 容子)
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