実物公開!資産が2倍に増えたポートフォリオ
プレジデントオンライン / 2014年5月26日 14時15分
アベノミクスで市場が盛り上がるなか、資産を倍増させているサラリーマン投資家がいる。高い運用益を得た彼らは、どんな金融商品に投資しているのか。手の内をすべて見せてもらった。
■円安+新興国株高で評価額が50%アップ
12年11月14日の党首討論で、野田佳彦前首相が衆議院解散を表明して以降、市場では円安と株高が進行。安倍晋三政権が誕生し、アベノミクスの大胆な金融緩和政策によって、その流れが加速し、1ドル=80円台で推移していたドル円レートは100円超に、8000円台半ばから9000円台前半で推移していた日経平均株価は、13年5月には5年4カ月ぶりに1万5000円をつけた。わずか半年でドル円レートは25%下落し、日経平均株価は80%も上昇した計算になる。海外でも、12年9月13日にアメリカでQE3(量的金融緩和政策第3弾)が実施されたことによって、株高が進行。アメリカや東南アジアなどでの株式市場で、過去最高値更新が続いた。
この円安、株高で大きな利益を手にした個人投資家も少なくない。
「1年前には30万円以上の含み損を抱えていた」という横山健一さん(仮名・45歳・サービス業)だが、いまや203万円の含み益が出ている(図)。
「今後の経済成長を重視しているので、投資先は新興国の株式が中心。まだまだ市場規模が小さく、流動性も低い国が多いので、どうしても値動きの幅が大きくなりやすい。そのぶん、株式市場に資金が流入したときには、大きく上振れする。おまけに為替変動の影響も受けやすい」(横山さん)
日本株の比率が低いのでアベノミクスの恩恵を受けたのは、主に為替の部分だ。それでも1ドル=80円台から100円台まで円安が進んだことで、「日に日に資産が増えていくのがうれしくて、1年前は月1回チェックするのもイヤだった口座の残高を、毎日チェックした」ほどだという。
とはいえ、好調な相場とは対照的に、現実の生活は厳しさを増す一方だとか。給料は増えるどころか、昨年の業績が厳しかったこともあり大幅ダウン。年収ベースでは500万円を割り込んだという。
「給料が減ったからといって、いきなり生活レベルを落とすのは至難の業。幸い資産が増えていたので、まずは含み益が膨らんでいたロシア株を一部売却。その次は、あまりに急上昇しすぎて、どこかで調整がくるのではないかと不安になった日本株を一部売却し、生活費の補填に充てた。金額にすると50万円以上。本来なら、次の投資資金に回したいのに……」
横山さんは、こう言ってため息をつく。QE3やアベノミクスの恩恵が庶民の給料にまで及ぶには時間がかかるようだ。
■外貨を買うべく節約し資産が3割増加
「資産の約半分は外貨建て商品」と話す山田美子さん(仮名・40歳・小売業)は、急激な円安で、保有する外債や外貨建てMMFの円建て評価額が3割アップした。
「1年前の総資産は約2000万円で、米ドルと豪ドルが円換算で500万円ずつくらいだった。金利が高ければ外債を買いたいところだけれど、あまりに低金利なので、ここ1~2年は外貨建てMMFが中心。この円高は、外貨を買うチャンスだと思い、できるだけ節約して投資資金をつくり、米ドル1ドル=80円、豪ドルも1豪ドル=80円を切ったところで、少しずつ買い増しした」(山田さん)
12年11月以降、急激に円安が進んだことで、外貨建て資産は円換算すると300万円近くも増えたのだ。
「こんなことになるのなら、MMFよりコストの安いFXを上手に使って、もっと外貨投資をしておけばよかった。投資にタラレバはないし、いまとなっては、後の祭りだけれど……」(山田さん)
■株価下落で節約生活に逆戻り
主要国の株式市場で、2013年の年初から5月下旬までの上昇率がもっとも高かったのは、いわずもがなだが日本株だ。13年5月29日の終値ベースでは、日経平均株価は年初から34.04%、TOPIX(東証株価指数)が32.68%、東証マザーズ指数に至っては118.96%も上昇している。ちなみに、過去最高値の更新が続くニューヨークダウの年初来騰落率は16.78%、好調が続くインドネシアのジャカルタ総合指数が20.48%、同じくフィリピン総合指数が24.50%。日本株の上昇がいかにすさまじいかが、よくわかる数字といえるだろう。そのため、専業投資家のなかには、「2週間ちょっとで1000万円超の儲けが出た」という強者も。
「日本株は、13年1月4日から『保証金に関する内閣府令』の改正が施行され、返済注文の約定後、その保証金をすぐに次の信用取引の担保として使えるようになった。同一の保証金で1日に何度でも信用取引ができるようになり資金効率が大幅にアップし、収益機会も拡大した。1月から4月まで、毎月1億円近く稼いでいる専業投資家もいる」(ある専業投資家)
日中は仕事に忙しいビジネスマンの場合には、信用取引の回転売買はできない。だが、好調な相場も手伝って、数日から数週間で取引を手じまうスイングトレードでも、十分に利益を上げることができる。浅田一郎さん(仮名・38歳・製造業)は、日本株の個別銘柄のスイングトレードを中心に、資産を運用している(図)。
「投資を始めた当初は、生活費の足しになればと、日常生活に役立つ割引券やギフト券がもらえる株主優待銘柄が中心だった。でも、よくよく考えてみれば、どんな相場のときにでも上がる銘柄はある。それで、不労所得を増やすべく、値上がりが期待できる銘柄にも投資するようになった」(浅田さん)
大きく儲けた銘柄は、第一三共やスギホールディングスなどだ。銘柄は、好業績な銘柄や、ニュースが出て動きそうな銘柄をピックアップしておき、あらかじめ下値と上値の目標を決めておく。下値に近づいたら買い、買値から2~3割上昇したら、利益確定する。ただし、「市場に勢いがあって、まだまだ上昇しそうなときは、持ち続ける」(浅田さん)こともあるとか。
12年末からは、アベノミクス効果で株価が急上昇したこともあり、株価が上がり続ける間は保有する作戦に変更。衆議院解散直後から優待銘柄を中心に買い始め、13年1月に入ってからは円安が追い風になる輸出関連銘柄も買い進めた。
その結果、日本株の評価額はもっとも増えたときで、前年比約2.3倍に。総資産も2260万円から2800万円に増えた。なお、日本株は13年5月までに3分の2を利益確定している。儲けで自動車を買ったが、5月下旬以降の株価下落局面を受けて、節約&貧乏暮らしに戻ったとか。
たとえば、浅田さんは週末には翌週に飲み食いする食品をまとめ買いし、支出を極力抑えている。昼食は値段の安い社員食堂を利用し、仕事で外出するときには、株主優待が使える店で食事をする。友人たちと飲みにいくときも、もちろん株主優待が使える店を選ぶ。目標は「週5日お金を使わないこと」。実家で家族と同居していることもあって、目標はほぼ達成でき、月額21万円の手取りのうち、17万円を貯蓄と投資に回しているという。
この相場で儲けた投資家は、単に運がよかったのではない。日頃から投資資金をつくる努力をするとともに、相場分析力も養ったからこそ、成果を挙げられたのだ。
(ライター 大山 弘子)
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