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ほどほどのポジションで定年までぶら下がるには

プレジデントオンライン / 2014年7月22日 12時15分

「定年まで働きたい」7割、「見通し真っ暗」4割弱

会社にぶら下がるのは難しいことではありません。会社は定型的な仕事をするようにできていますから、よほどまずいことをしない限り、ずっとぶら下がることは可能です。

一方で最近はラインの管理職に登用される人数が減らされています。多くの人が管理職ポストに就けた時代は終わり、今後は課長補佐止まりの人が増えると思います。要するに、そもそも出世できる人が少なくなっているのが現状です。

そこで仕事は適当に、ほどほどにやっていけばよいという人はそうすればよいと思います。しかしそれで本当に納得し、心から満足できる人はどれだけいるでしょうか。私たちは1日の大半を仕事に費やしています。そんな長い時間を毎日ぶらぶら過ごして幸福だ、という人は決して多くはないはずです。まして、定年まではとてももたないでしょう。

だからみんな出世を目指して頑張るべきだ、と言っているのではありません。大企業の場合、40歳前後で管理職への登用が決まります。しかし管理職になれる人の数は限られ、なれたとしても肩書だけで本来の意味での管理職ではなく「自分は会社の中核にはいない」と感じる人がこれからは増えていくと思います。

つまり、定年まで約40年あるキャリアの中間地点で大半の人は将来の見通しがついてしまう。では、見通しがついてしまった後のキャリアをどう生きればよいのか。どうすればその後もイキイキと働けるのか。この問いは今後、個人も企業も直面する大きな問題です。

会社で働く意味を失いかけたとき、みんな考えるのが「辞めて独立するか、会社にぶら下がるか」という二者択一です。でも、いきなり会社のコミュニティを離れ一人になってもまずうまくいきませんし、会社に残っても、会社に背を向けるような働き方をしていたら充実感は得られません。結局、二者択一の先にあるのは袋小路でしかなく、自分のこれまでとこれからについて深めていかなければ根本的な解決はできません。

■会社を辞めずに独立せよ

私はこれまでにサラリーマンから別の道へ転身して成功した150人にインタビューを行いました。NHKから落語家へ、あるいはNTTから提灯職人へなど彼らの転身プロセスをたどることで、自分の働き方を見直すことができました。

その中で2つのポイントが見えてきました。1つは、時間の経過がなければ、自分を深めることができないということ。自分自身を変えることは困難ですが、時間をかけて自分の立ち位置を変えれば会社との関係は大きく変化します。そうすれば、社内の景色は相当違って見えるようになるのです。

もう1つのポイントは、会社のコミュニティを大切にすること。会社には労働を提供して報酬を得る場所というより、仲間との共同体という側面が強くあります。人のつながりの大切さは忘れてしまいがちですが、いきなり退職して独りぼっちになったら行くところすらなくなります。

会社のコミュニティを大切にしつつ、次のステップを考えてみる。その結果がどんな形になるかは人それぞれでしょう。私がお勧めしたいのは「会社を辞めずに独立する」という方向性です。会社の仕事を続けながら、自分なりの天職やライフワークを模索するのです。

私自身、会社の仕事とは別に始めた執筆活動が大きな充実感とやりがいをもたらしてくれています。本業がおろそかになると考える人がいるかもしれませんが、私は執筆活動の充実にともなって会社の仕事の質もよくなっている実感があります。

自分の核心につながっている何かを見つけることができれば、仕事も充実して会社にぶら下がってなどいられません。

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楠木 新
1979年、京都大学法学部卒業後、大手企業に勤務。人事・労務関係を中心に、経営企画、支社長等を経験。著者に『サラリーマンは、二度会社を辞める。』『人事部は見ている。』などがある。

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(人事・キャリアコンサルタント 楠木 新 構成=宮内 健)

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