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大研究! 気になるお隣さんの教育方針

プレジデントオンライン / 2014年8月2日 10時15分

子どものやる気を伸ばす親のタイプは?

受験の世界が変わりつつある。塾に対する親の期待は「成績を伸ばすこと」「学力をつけること」だが、「いつ、どの時点までに成果を出してほしい」というリクエストは数年前までほとんど見られなかった。ところが、塾と家庭との接点に「父親」が積極的に参加しはじめてから、「何カ月で効果が出るのか?」と聞かれることが増えてきた。

変化の源流を辿ると、PISA(OECD生徒の学力到達度調査)の日本順位が凋落(ちょうらく)した2006年と09年、その間に修正路線が確定した「ゆとり教育」への反省と反動に辿り着く。子供への教育熱の高い親の多くは、子供の自主性と教師個人の創意工夫だけに依存した「ゆとり教育」は、失敗だったと結論づけた。その反動として、子供の学習にも数値目標と期限を定めるビジネス的な視点が必要だと考える父親が、加速度的に増加したものと思われる。

子供の教育に関して、ビジネスライクなアプローチを取る父親を、是とするか否とするか。意見のわかれるところだが、ポイントは、この要求の裏側にある「親の狙い」だ。果たして何が正解なのか。そこを考えてみよう。

■学ぶことの楽しさを教える親、教えない親

今回は小学生以下の子供を持つ父親と母親500人に、教育方針に関する意識調査を行った。軸になっているのは、次の2つの質問だ。

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(1)子供のやる気はどう引き出すか
(2)教育にお金や時間・労力をかけているか


[アンケートの概要]
2013年2月にネット調査を実施。対象は、小学生以下の子供がいる30~59歳の男女500人。
男性:219人
女性:281人
調査協力はアイブリッジ
※数値は四捨五入をしているため、合計が100%にならない場合があります

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(1)から見ていこう。子供のやる気は親が働きかけて引き出すものと考える人を「働きかけ派」、やる気が出るまで親は見守るしかないと考える人を「待つ派」とした。

学歴でどう違うの?
●最終学歴が
大学院……56%(働きかけ派) 44%(待つ派)
大学……60%(働きかけ派) 40%(待つ派)
短大・専門学校……58%(働きかけ派) 42%(待つ派)
高校……50%(働きかけ派) 50%(待つ派)

卒業大学でどう違うの?
●卒業した大学が
難関国立大学……63%(働きかけ派) 37%(待つ派)
その他国公立大学……66%(働きかけ派) 34%(待つ派)
有名私立大学……61%(働きかけ派)  39%(待つ派)
その他私立大学……57%(働きかけ派) 43%(待つ派)

家庭の経済力でどう違うの?
●世帯年収が
1500万円以上……75%(働きかけ派) 25%(待つ派)
1000万~1500万円未満……62%(働きかけ派) 38%(待つ派)
500万~1000万円未満……60%(働きかけ派) 40%(待つ派)
500万円未満……50%(働きかけ派) 50%(待つ派)

子供への期待度でどう違うの?
●学歴期待感(自分の学歴を超えてほしい)
かなりそう思う……72%(働きかけ派) 28%(待つ派)
そう思う……56%(働きかけ派) 44%(待つ派)
同じくらいでいい……60%(働きかけ派) 40%(待つ派)
あまり思わない……33%(働きかけ派) 67%(待つ派)
まったくそう思わない……14%(働きかけ派) 86%(待つ派)

お金や時間・労力のかけ方とどう関係するの?
●教育熱心度(どんな教育を与えているか)
お金も時間・労力もかけている……77%(働きかけ派) 23%(待つ派)
時間・労力より、お金をかけている……70%(働きかけ派) 30%(待つ派)
お金より、時間・労力をかけている……60%(働きかけ派) 40%(待つ派)
お金も時間・労力も、あまりかけていない……38%(働きかけ派) 62%(待つ派)
お金も時間・労力もかけていない……16%(働きかけ派) 84%(待つ派)

学歴信奉度でどう違うの?
● 学歴信奉度(学歴で人生は決まるか)
かなり決まる……85%(働きかけ派) 15%(待つ派)
どちらかといえば決まる……67%(働きかけ派) 33%(待つ派)
どちらともいえない……52%(働きかけ派) 48%(待つ派)
どちらかといえば関係ない……38%(働きかけ派) 62%(待つ派)
まったく関係ない……31%(働きかけ派) 69%(待つ派)

全体の比率は、ほぼ6対4で「働きかけ派」が多い。高学歴になるにつれ「働きかけ派」の比率が高まるかと思われがちだが、大学院卒と大学卒では逆転現象が。私の経験上、超高学歴者は「ある程度までレールを敷いたらあとは本人次第」と考える傾向がある。大学卒の一部、大学院卒ではより多くが、こういった考え方だ。指導現場での実態としても、一橋大や早稲田大レベルまでは「やらせる勉強」でも何とか合格まで導けるが、東大・京大・国公立大医学部レベルになると、そうはいかない。本人自身が「合格を取りにいく」必要がある。

とはいえ全体としては、やはり高学歴者に「働きかけ派」が多く見られる。考えてみればこれは当然の帰結だろう。親自身が学ぶことでトクをした経験を積んできたのだ。だから子供にも、学ぶことの楽しさ、意味を、迷いなく教える。チャンスを与えようとする。

家庭の経済力と教育方針の関係はどうか。ここに絶対的な事実がある。「収入がある親には教育費を減らす理由がない」ということだ。また、高収入の医師やエリートビジネスパーソンはたしかに多忙だが、立場上、時間を捻出する力も持ち合わせており、調整して子供との時間をつくる。逆に、年収が低い家庭ほど子供のことを考える余裕がなく、結果として子供との時間も少なくなる傾向にある。長引く不況によって、「働きかけ派」でありたい思いとは裏腹に、「待つ派」に甘んじざるを得ない家庭が増加しているとも聞く。

しかし、子供への働きかけにおいて、時間と金銭の制約は、知恵と熱意によって乗り越えられるということは知っておきたい。

■あなたは、子供に何を期待しているか

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塾や習い事、受験準備、学校選びなどで、お子さんにどんな教育を与えていますか?

次に、(2)の「教育にお金や時間・労力をかけているか」を見ていこう。お金も時間・労力も両方かけている親を「超積極的」とすれば、これが3割弱。お金はかけないが時間・労力はかける「積極的/時間・労力」な親と、お金も時間・労力もあまりかけていない「消極的」な親がそれぞれ3割弱。以上が3大勢力だ。

冒頭のビジネスライクな父親は「積極的/時間・労力」のグループに入ることが多い。数値目標と期限を設定することは、本質的に自身が評価者側に回ることを含んでいる。よほど子供に対して「聞き上手」でない限り、自身の経験や考え方に基づいて評価を下してしまいがち。結果として自分がコントロールすることへの欲求が強く、かつ、子供への期待が高い親像が形成されるわけだが、ここで「期待の仕方」には2種類ある。

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ひとつは、親が子供の成績に一喜一憂しがちな、「結果への期待」。もうひとつは、本人の能力と努力を信じる「可能性への期待」。数多くの親子と一緒に受験を戦ってきた。振り返ってみると、子供を伸ばすのが後者の親、子供の成長力を削るのが前者の親だった。ビジネス経験は、評価する力としてではなく、可能性を具体化する力として発揮してもらいたいと思う。

最後に、親の受験経験と教育方針の関係について見ておこう。自身の受験を成功とする親と失敗とする親とでは、自分の学歴を超えることへの期待と、働きかけの度合いに違いがあるようだ。だが、どちらの人にも心がけてほしいのは、自身の成功や失敗、どんな勉強のスタイルを選んできたか、どんな育てられ方をしたかに縛られないことだ。

図を拡大

たとえば、自分のやり方に自信がありすぎる人は、自分に限界を感じてもそれを認めるのを嫌う。勉強もしつけも、人に委ねることができず、自分がやらねば気が済まない。人任せにすることを「安易な方法」とかたくなに拒絶する人もいる。ところが、こういった人がすべて抱え込むのをやめ、子供自身や配偶者に任せたり、指導のプロを頼ったりした瞬間、子供の成長カーブがグンと上向くことがままあるのだ。

「子供と親は別人格」。働きかけ派にも待つ派にも、この真理を胸に子供の可能性の芽を育んでほしい。

(個別指導教室「SS-1」代表 小川 大介 プレジデントFamily編集部=構成)

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