『凄母 あのワーキングマザーが「折れない」理由』佐藤留美著
プレジデントオンライン / 2014年9月20日 18時15分
佐藤留美(さとう・るみ)ジャーナリスト。1973年、東京都生まれ。青山学院大学卒。出版社、人材関連会社勤務を経て、2005年企画編集事務所「ブックシェルフ」設立。人事、人材、労働、キャリアなどをテーマに雑誌やオンラインで活躍。著書に『結婚難民』『資格をとると貧乏になります』など。
確かに「すごい!」。朝4~5時に起きて自己研鑽の勉強に夕食の支度、子どもを実家に託すため、羽田から神戸空港までピストン輸送……。仕事も育児も全力投球する11人の「凄母(すごはは)」たちの、「母でありつつ組織で活躍する」ためのサバイバル戦略が披露された本書は、オンラインで人気を博した連載の単行本化だ。
一見すると、ワーキングマザー向けの指南書だが、凄母たちの時間管理術やコミュニケーション術は、「母」でなくても、広くビジネスパーソンの参考になりそうだ。
また彼女たちの働き方や所属する組織の対応を通して、今企業がやるべきことのヒントが見え隠れしている。それは紛れもなく、多様化への取り組みだ。
著者は人事やキャリア関連の取材・執筆を続けるジャーナリストの佐藤留美さん。「元気が出た、という声と同時にこんな働き方ムリ! という冷めた声もある」と打ち明けつつ、子育てだけでなく、家族の病気や介護などさまざまな状況が起こることを想定し、働き手には「交渉上手・巻き込み上手になること」、企業には「柔軟な対応」を進言する。
「今後70歳まで働くことになれば、いろんなパターンが出てくるはず。部下100人の女性管理職が出産したり、『孫の預かりと、どう両立するか』と悩むワーキンググランドマザーが登場したり。何歳だからこう、という制度や研修を考えること自体がもう古い」と、個別対応の必要性を力説する。
となると、管理職は部下のプライベートにも踏み込まざるをえない。たとえば「わが子が万引きしてしまった」と部下が打ち明けたら、適度に仕事を調整して「子どもに向き合う時間をとってやれ」と言えるか。またそもそも、部下が“個人の事情”を打ち明けてくれるかどうか。「そこに必要なのは管理職の人間力」と佐藤さんは指摘する。
凄母の生き様に感嘆するだけでなく、自社のサステナビリティに向け、考える契機となりそうだ。
(江頭 紀子 向井 渉=撮影)
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