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生理的欲求は、薀蓄では満たされない -サントリー天然水

プレジデントオンライン / 2014年10月12日 15時15分

デザインした人 加藤芳夫氏(サントリー クリエイティブディレクター)

デザインは人間の生活とともにあります。食べ物や飲み物のパッケージについていえば、生活の不満を解消するデザインでなければなりません。

ここで質問です。みなさんがジュースやコーヒーではなく、ミネラルウオーターを飲みたくなるのはどんなシーンでしょう。多くの人は、ただ純粋に喉の渇きを満たしたいときと答えるのではないでしょうか。

喉が渇くというのは人間の自然な、生理的な欲求です。そんなときに、「この水にはこんな成分が含まれている」などという薀蓄は消費者に響きません。「サントリー天然水」は機能面を強調しすぎず、自然を感じさせるようなものにデザインしました。山のイラストをラベルに描いているのもそのためです。

イメージを補足するための言葉として、「天然水」という3文字を選びました。今でこそ天然水という言葉は一般的に使われていますが、それまでは「名水」という表現しかなかったのです。1991年の発売時から、名称もデザインも少しずつリニューアルを重ねているのですが、天然水という言葉は一貫して使い続けています。

ペットボトルそのものの形でも、自然のみずみずしさを表現しています。ボトル上部を覆っている氷のような模様は、単なる水ではなく冷たい雪解け水であることを表しています。ボトル下部の捻れた波線は、何も模様のない状態では見えない透明の水が動いて見えるような効果を狙いました。動きがあるということは、命があるということ。中身の水にも生きた印象、つまり人工的なものではなく天然のものであるという印象を与えたいと考えたのです。

いいパッケージデザインとは、消費者が思わず手に取りたくなるもの。そのためには商品と消費者との距離感が重要です。もし、サントリー天然水のラベルに山や氷だけが描かれていたとすると、そのデザインをクールなものと捉え、自分と距離を感じてしまう人もいるかもしれません。それを防ぐため、花や鳥のイラストを入れ、暮らしの中の身近な存在として受け入れてもらうよう工夫しました。

機能面では、ペットボトル樹脂の使用を極力控えてボトルを薄くしたり、剥がしやすくて薄いラベルを使ったりすることで、飲み終わった後には簡単に捻って潰して捨てられる仕様に設計しています。当時、こうしたエコの視点でデザインされた商品はほとんどありませんでした。また、2リットルペットボトルではボトルの真ん中に凹みをつくり、持ち上げたときに指先が安定するようにデザインしています。

握りやすさと潰しやすさなど、相反する条件を製品として成立させるためには、各部門の連携が必要不可欠です。サントリーの場合、私一人ではなく、技術担当、宣伝担当など複数のチームで商品のデザインを決めていきます。デザイナーを社内に置く体制を「インハウスデザイン」と呼びますが、そのことがサントリーの強いブランドづくりに繋がっていると思います。

累計6億ケース! 市場シェアは18年連続トップ

「南アルプスの水」「山崎の水」から「天然水」に名称を変更し、デザインを一新。1991年の発売から現在までの売り上げは約6億ケース。ミネラルウオーター市場で18年連続シェア1位。「南アルプス」「奥大山」「阿蘇」の3つの採水地がある。

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加藤 芳夫(サントリー クリエイティブディレクター)
1953年、名古屋市生まれ。現在、サントリー食品インターナショナル食品事業部ブランド戦略部シニアスペシャリスト。日本パッケージデザイン協会理事長。2012年、パッケージデザインの国際賞「ペントアワード」名誉賞受賞。代表作に「BOSS」「DAKARA」「なっちゃん」など。

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(サントリー クリエイティブディレクター 加藤 芳夫 構成=矢倉比呂 撮影=佐藤新也)

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