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「収益基盤の構築」高島屋新社長 木本 茂

プレジデントオンライン / 2014年10月16日 16時15分

高島屋代表取締役社長 木本 茂氏

日本経済は消費税増税の逆風を乗り切り、株価は再び上昇局面に入ったようだ。2020年の東京オリンピックを控え、各社、攻めの経営が目立つ。少子高齢社会のなかで、企業はどこへ向かうのか。新たに経営トップの座についた人物を解剖し、未来への展望を開く。

■少数で営業力を高めるウルトラマジック

ようやく長期低迷から抜け出し、2年連続増収を記録した百貨店業界。だが、集客力の低下、利益率の低さといった長年の課題も残る。業界第3位の高島屋は、木本茂社長の舵取りのもと、グループ会社・東神開発のノウハウ活用と海外事業の強化で低収益からの脱却を図る。

――印象に残っている仕事は?

【木本】2007年から3年間、新宿店の副店長をつとめていたときに断行した構造改革だ。新宿店は開店以来ずっと赤字が続いていたため、新宿店の社員約250名を他の店舗に転出し、販管費を削減した。ただし、営業力の低下を防ぐため、全店から優秀な人材を集め、少人数で切り盛りできる体制をつくった。利益が出やすい筋肉体質が整ったと思う。個々の能力も大事だが、私は組織で動いていく力を重視している。全社の叡智を結集して実施した構造改革は社歴の中でも一番のターニングポイント。新宿駅は再来年に向けて新南口の工事が進んでおり、市場の拡大が期待できる。やはりマーケットが活性化している立川とこの新宿は重点エリアだ。

――街づくりの発想を百貨店に生かすという経営方針の実行は。

【木本】ショッピングセンターの開発を行う子会社、東神開発のノウハウを活用する。グループ全体の営業利益290億円のうち、東神開発の利益は約3分の1。収益性が高く、玉川高島屋S・Cや流山おおたかの森、シンガポール高島屋の専門店部分など、海外も含めて50年にわたり専門店事業を手掛けてきたので、商業施設をプロデュースする力に長けている。文化発信基地としての百貨店をブラッシュアップしつつ、我々のDNAを持ったデベロッパーの目で商業施設全体の魅力を高めていきたい。この4月には新宿店の運営を考えるプロジェクトを東神開発と共同で立ち上げた。百貨店をキーとした長く滞在したくなる街づくりを進めていく。

――12年に出店した上海高島屋は苦戦が続いている。

【木本】いま好調なシンガポール高島屋も10年間は赤字にあえいだ。現在、トライアルアンドエラーを重ねながら、MDの修正をかけている。当初、高めに設定していた価格も見直した。安くするのではなく、幅を広げてマーケットに対応させていく。上海は市場の伸びが7%以上ある有望なマーケット。10年ほどで黒字に転換したい。再来年夏に開くベトナム高島屋は、シンガポール同様、百貨店と専門店の2本立ての構成で大家としての事業収益がある点も同じ。黒字化は早そうだ。水面下で別の国への進出も検討している。

――前社長の鈴木弘治氏は代表権のある会長に就任。会長と社長の役割をどう棲み分ける?

【木本】鈴木はグループ全体の経営を統治し、私は百貨店の営業改革を中心に経営を執行する。これまで鈴木が両方を担っていた役割を分けることで全般のスピードを上げていくのが狙い。去年、国内百貨店業の営業収入は7600億円だったが、110億円の利益しか計上できていない。収益基盤を高めていくのが私の最大のミッションだ。

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高島屋代表取締役社長 木本 茂
1956年生まれ。79年横浜市立大学卒後、横浜高島屋入社。特選品売り場、食料品バイヤーなどを経て、2006年高島屋横浜店副店長、07年新宿店副店長、10年新宿店店長。11年常務取締役企画本部副本部長。14年より代表取締役。

出身高校:海城高等学校
長く在籍した部門:営業・コーポレート
座右の書(または最近読んだ本):組織力、チームワークをテーマにした本
座右の銘:一枚岩の団結
趣味:ゴルフ、スキューバ

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(高島屋社長 木本 茂 三田村蕗子=構成 大槻純一=撮影)

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