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「仕事は何のためにするか」言える人 -右腕にしたい人材の条件【東燃ゼネラル石油 武藤 潤社長】

プレジデントオンライン / 2014年12月1日 16時15分

東燃ゼネラル石油 武藤 潤社長

企業の好決算が相次ぎ、企業業績の急回復の兆しも出てきて、景気回復に期待が高まっている。辣腕&変革経営者が求める「人材の条件」を語り尽くす。

■徹底した議論が社員を一体化させる

私たちは、原油の輸入から精製、販売までを手がけています。扱っているのは、ガソリンや灯油といったコモディティ(必需品)。「味」や「におい」のように、消費者にわかりやすい違いがあるわけではなく、いわゆる「差別化」を打ち出すのが難しい商品です。

そんななかで、お客さまに選んでもらえるようなサービスステーション(ガソリンスタンド)やブランドをつくるには、お客さまに喜んでもらえる付加価値をつけなければなりません。この付加価値を生み出して提供していくのが「人」なのです。「人材」は「人財」であり、人こそが同業他社と違ったサービスや価値を提供できる「源泉」にほかなりません。

私たちは2012年6月、大きな転換を遂げました。アメリカの石油大手エクソンモービルから日本事業を買収して、新たなスタートを切りました。外国資本が過半数の株式を所有する会社から、日本の資本が大半を握る会社へと体制を変えました。

世界のエネルギー業界をリードするエクソンモービルと10年以上にわたって密接に仕事をしてきたので、グローバル企業とはいかなるものか身をもって経験してきました。

エクソンモービルは、働いている人が多様です。国籍や宗教、言語など実にさまざま。考え方、意見、行動も異なります。

多様だからこそ、たとえば一つのプロジェクトを立ち上げるとき、さまざまな意見を戦わせ、議論にかなりの時間をかけます。その結果、一つのゴール(目的)が決まったときの出席者の「納得のレベル」が非常に高い。全員が一丸となって、プロジェクトを進めることができるのです。

一方、日本はお互いに相手の意図を察することができるハイコンテクストな国なので、議論することなく、リーダーの指示や意向に沿った動きができます。しかし、納得のレベル、意識の共有といった点で、ばらつきが生じます。同調意識のためか、意見を述べる人も、さほど多くはないでしょう。一つのゴールに向かう“熱の総量”が、日本企業は、欧米企業より、劣るかもしれません。しっかりと意見を戦わせて議論を重ねたうえで物事を決めるプロセスを踏む。このプロセスが仕事の推進力を生んでいきます。

ただ、あまりにも役割と責任が明確なため、チームワークがおろそかになりがちなのは、欧米の企業ではよくあることです。企業の成長にとって、「助け合い」の精神は欠かせません。ここは、日本に本社機能を置く私たちの強みであります。

エクソンモービルとの新たな資本・業務提携によって、私たちの求める社員像が大きく変わりました。それを明確にするために、「求められる考えと行動」と題した、一つの表を作成しています。横軸に「これまで」「これから」、縦軸に6つの「考え」「行動」があります。

(1)指示待ち→当事者意識
(2)部門毎の最適化→全体最適
(3)グローバル企業の一部→危機意識
(4)プロセス重視→プロセス+成果の追求+スピード感
(5)自分の仕事をきっちりやる→垣根を越えて協働する
(6)リスク回避→リスクを管理してチャレンジ

エクソンモービルは非常に大きな組織で、経営方針がハッキリしています。事業部、部門の末端まで役割が明確で、権限も規定されています。つまり、エクソンモービルのグローバルな機能・事業別の組織から、国内で完結する一体した組織となり、効率的な経営を行う体制に移行したので、その組織で力を発揮できる働き方が求められています。実は、この半年間、社員を集めたフォーラムで繰り返し訴え続けています。新人研修、管理職研修などでも説明しています。

そして、これらの「考え」「行動」のベースにあるのが、「正直さ、誠実さ」です。多様性のエクソンモービルを支える価値観ともいえます。このベースがあって結果が出てきます。このベースを欠いて結果を出しても評価されません。この価値観は、新生・東燃ゼネラル石油の私たちが大事にしていかなければならないものです。

私たちは今、この「これまで」から「これから」へ移行を促すような人材育成制度や業績評価制度をつくっている真っ最中です。

■大震災を経験して変わった

もう一つ重要なのが、ミッション(使命)を意識することです。私たちの使命は、簡単にいうと「日本のエネルギー会社として社会に貢献する」こと。日々、仕事のなかで「何のために仕事をするのか」を忘れてはいけない。

一昨年、東日本大震災では、私たちのサプライチェーン(供給網)が壊滅して、石油などをいつものように供給できなくなりました。私たちのミッションが遂行できない、という非常事態に直面したわけです。

そんなとき、和歌山工場から航空自衛隊入間基地にガソリンや軽油、灯油をドラム缶で1000本を運び込みました。また、いち早く仙台の塩釜油槽所を再開して、他の石油元売りにも広く使ってもらえるようにしました。いろいろな問題を多くの社員が一つずつ解決して、実現することができました。

さらに、津波で被害を受けた陸前高田市にコンテナ型の仮設サービスステーションを設置。震災直後、いち早くプロジェクトチームを立ち上げ、中央の省庁や地方の関係省庁、地元自治体と協議を重ねて、前例のない方法で仮設の許可をもらうなどして、完成しました。実は途中で挫折しそうになったときもありました。そんなとき社内から「なぜあきらめるんだ! これをやるのが俺たちの仕事だ」という声とともに、サポーターが続々と現れました。

当時、私は川崎工場長だったのですが、東京電力管内が供給不足に陥ったので、工場長の権限で自家発電装置のフル稼働を決め、余剰分の電力を供給する決断をしました。

以前から、私たちは「意思決定が遅い」と揶揄されることが多かったので、こうした私たちの行動は外部からは「なにか裏があるのではないか」と映ったようです。もちろん、そんな考えはまったくありません。東日本大震災という緊急時に、危機意識、当事者意識を持って、単に言われたことだけではなく、それ以上のことを成し遂げることができました。私たちを動かしたのは、ミッションの遂行、つまり、エネルギーの安定供給のためだったのです。どんなときにでも、このようにミッションを意識して仕事ができる人を、私たちは求めています。

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東燃ゼネラル石油代表取締役社長 武藤 潤
1959年、栃木県生まれ。栃木県立宇都宮高校、横浜国立大学工学部卒。慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了。82年ゼネラル石油(現東燃ゼネラル石油)入社。東燃ゼネラル石油常務を経て、2012年6月より現職。

座右の銘・好きな言葉:自立と自律
座右の書・最近読んだ本:『リーダーシップ論』ジョン・P・コッター
尊敬する経営者・目標とする経営者:いない
私の健康法:ウオーキング

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(東燃ゼネラル石油代表取締役社長 武藤 潤 岡村繁雄=構成 金澤 匠=撮影)

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