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なぜディズニーは持続的成長を続けることができるのか?

プレジデントオンライン / 2014年12月1日 11時15分

『ディズニーを知ってディズニーを超える顧客満足入門』鎌田洋著(プレジデント社)

■95%のリピート率を実現する「CS」

東京ディズニーリゾートが絶好調です。2013年の売上高は4735億円で、営業利益は1145億円。いずれも過去最高を更新です。背景には開園30周年という節目のイベントがありましたが、近年は増収増益が続いており、イベントなどの短期要因がなくてもおそらく売り上げを伸ばしていたでしょう。

どうして東京ディズニーリゾートは持続的成長を遂げることができたのか。最大の要因は、95%以上といわれるリピート率です。リピート率95%以上ということは、来園者100人のうち95人以上はふたたび足を運んでくれるということ。売り上げをつくるうえで、これほどありがたいことはありません。

では、驚異のリピート率を実現させている源泉は何でしょうか。それは、「CS(顧客満足)」です。ディズニーには、2回目以降はチケットが安くなるなどの割り引き制度はありません。それでもリピートしたくなるのは、来園時に何かしらの感動を覚えて、またあの体験を味わいたいと思うから。つまり感動によってCSが高まり、それが次のリピートを引き起こしているのです。

ビジネスの原点は、「人を喜ばせること」にあります。商品なら、それを保有したり使用することで、顧客が幸せな気持ちになる。サービスならば、顧客から自然に「ありがとう」という言葉が出てくる。そのような「喜び」をもたらす商品やサービスに人々はお金を支払い、その存在を認めます。ディズニーは、1923年に設立されて以来、人を喜ばせることを徹底して追及してきました。その姿勢が、いまの持続的成長をもたらしたのです。

■「人を喜ばせる」原点に立ち戻れ

企業はいまこそ「人を喜ばせる」という原点に立ち戻るべきです。単に本質論として原点回帰を訴えているわけではありません。現実問題として、営業やマーケティングよりCS向上に企業のリソースを割いたほうが、企業が生き残る確率か高まるのです。

多くの企業は自社の商品やサービスを売るために営業部隊を強化し、商品やサービスの認知度を高めるために広告宣伝活動を展開しています。これらは主に新規顧客を獲得するための施策といえます。ただ、市場が成熟している時代に、新たに顧客を掘り起こしたり、他社から顧客を奪うのは簡単なことではありません。営業やマーケティングは必要ですが、市場が拡大している時代に比べて効果性が落ちています。

成熟の時代に求められるのは、既存顧客の囲い込みと深掘りです。自社の商品やサービスを知らない人に対して、その魅力を伝えて購買行動を起こさせるまでには、越えなくてはいけないハードルがいくつもあります。一方、既存顧客は自社の商品やサービスの中身を知っているので、少なくても最初の関門は突破しています。同じ金額を売り上げるなら、自社のことを何も知らない層にアプローチするより、既存顧客に働きかけたほうがずっと簡単です。

既存顧客にリピートしてもらうための王道的なアプローチが、CSの向上です。既存顧客は自社の商品やサービスを一度経験しています。その経験が喜びをもたらすものであれば、顧客ほうから「また感動を味わいたい」と近づいてきてくれます。CSが高ければ、軽妙な営業トークや、お金がかかるマーケティング施策に精を出す必要はありません。商品やサービスを通して、顧客に喜びを感じてもらえるかどうか。既存顧客に対しては、それが最強の営業やマーケティングになります。

■景気が悪いほどリピート率は高まる

ディズニーの場合はどうだったか。東京ディズニーリゾートのCSの高さは折り紙つきです。公益財団法人日本生産性本部が行っているJCSI(日本版顧客満足度指数)の2013年度の調査で、東京ディズニーランドは384企業中、1位でした。最新の2014年度第3回調査結果ではエンタテイメント部門で劇団四季に抜かれましたが、それでも堂々の2位です。

CSが高ければ、顧客に「また行きたい」という気持ちが生まれて次の来園につながります。その結果が、95%以上という驚異のリピート率になってあらわれているわけです。

あくまでも私の見解ですが、ディズニーランドのリピート率は、景気が悪いときほど高くなる傾向があります。

一般的に景気が悪くなると、人は遠出を控えるようになり、観光業の売り上げは落ちていきます。ディズニーランドの場合も、景気悪化に伴って遠方から観光バスツアーでやってくる顧客は減りました。ところがその一方で、関東近県で3500万人いるといわれる既存ユーザーは、景気が悪い時期ほどリピートしてくれました。近場のユーザーは「沖縄やハワイに行く余裕はないから、日帰りか一泊でディズニーランドにいこう」と考えて、ディズニーランドにやってくるのです。いわゆる「安・近・短」です。

もちろん関東近辺には、ディズニーの他にもさまざまな娯楽施設があります。その中でディズニーを選んでリピートしたのは、やはりCSが高いからでしょう。近場のユーザーがリピートしてくれたおかげで、ディズニーランドは景気低迷期においても、その影響を最小限に抑えることに成功しました。成熟市場では既存顧客をどれだけつかんでいるかが重要ですが、まさにディズニーは既存顧客に支えられて成長を続けているわけです。

(ヴィジョナリー・ジャパン社長 鎌田 洋)

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