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公約不要、選挙は「顔と声と身長」で当落確定済

プレジデントオンライン / 2014年12月10日 12時15分

■有権者はマニフェストなど理解せず投票する

アベノミクス解散? 独りよがり解散? はたまた、安倍のみクスリ解散か?

大義なき解散とも言われる今回の総選挙の行方はどこへ向かうのか。メディアは票読みと議席予想に血眼になっている。だが、ある選挙区で「どの候補者が勝利するか」が、何も知らない子どもでさえも当てられるとしたら……。

通常、人は選挙で投票するとき、どんな基準で一票を投じる人物を決めるのか。多くは社会問題、経済問題に関する候補者の政策や、発言の明晰さ、リーダーシップなどを論理的に検討して選んでいるだろう。

ところが、米国にこんな研究がある。

2000年にジョージ・W・ブッシュとアル・ゴアが争った大統領選挙で、ふたりの候補者の方針に関して、12の項目を国民に質問した。「所得税の削減に賛成しているのはどちらか」「医療保険の拡充に賛成しているのはどちらか」といった内容だ。国民の正解率が高かったのは2問だけ、全問正解できた人は半分に満たなかったという。つまり、有権者は候補者たちのマニフェストなどあまり理解していなかったといえる。

さて、日本はこれに比べてマシだろうか。

私たちは新聞やテレビを眺めはするが、それで果たしてどれだけ候補者たちの政策を理解しているだろう。自民党はやっぱりけしからん、とか、民主党はだらしなくて頼れない、という程度の根拠で投票することも少なくないのではないだろうか。

社会情勢の知識がうろ覚えで、候補者の政策も心もとないとき、有権者はどうやって投票しているのか?

米国デポー大学の心理学者、ハーテンステイン博士はこう答える。

「そんなとき、私たちが頼るのはヒューリスティックスです。ヒューリスティックスとは、複雑な問題に対して、簡単で手っとり早い方法で決断すること。所属政党だけで投票先を決めるのもそうですし、候補者の顔立ちや身長などで決めるのもヒューリスティックスです。実際にそうした基準で投票されたとしか思えないデータが、アメリカの国政選挙には多々あります」

選挙に限らず、仕事でもプライベートでも、人が何かを意思決定するときに、理詰めで答えに迫るのではなく、直感に頼ることが多い。それがヒューリスティックだ。

■リンカーンもケネディも「外見力」で勝利

歴史をさかのぼれば、1860年の大統領選挙で、エイブラハム・リンカーンはニューヨーク州のグレースちゃんという11歳の少女の手紙の「ひげがあるほうが立派に見えます」という助言に従ってほおひげを生やし、僅差の選挙を制した。

また、1960年の大統領選挙では、史上初めての候補者テレビ討論会が行われたが、プロによるメーキャップを施し、健康的に外見を整えたケネディが、痩せて顔色が悪かったニクソンよりもはるかに優勢に見えた。やはり僅差の選挙戦となったが、この討論会の印象は最後までついてまわり、ケネディに勝利をもたらしたと言われている。

興味深いのは、この討論会をラジオで聞いた人々は、ニクソンのほうが優勢だと思ったことだ。

ただ、これだけではたまたま偶然の「都市伝説」の域を出ないと考える向きもいるだろう。

しかし、2005年『サイエンス』誌に掲載された、プリンストン大学のトドロフ博士らの研究は衝撃的だ。ここでは、被験者たち(学生など)は2枚ひと組の写真を次々見せられ、「どちらの人物が、より有能か?」という質問に答えた。

写真は、すべて民主党と共和党の国会議員候補のものだった。2枚の写真を見て、左側の人物のほうが有能そうだと感じたなら、被験者たちと同じ感覚を持っているということだ。そして左側の人物は実際に2004年の選挙で、右側の対立候補に勝利した。

学生たちは熟考したわけではなく、ほんの一瞬の印象で有能そうかどうかを決めた。その結果、有能と評価された方の候補者の72%が実際に当選していたという。これなら、政治評論家の予測など必要ないと思えてくる。

立候補者の何カ月、何年にわたる選挙活動も、一瞬の見た目が有能そうかどうかでムダになってしまうとしたら、選挙そのものを考え直したくなってくるというものだ。

■5歳の子供も写真で「有能な人」を嗅ぎ分ける

前出・ハーテンステイン博士によれば、さらに驚くべき実験があるという。

「スイス人の5歳から13歳の子供たちに、フランスの国会議員選挙の候補者の写真を同じように見せました。そして“一緒に船旅に出る船長として頼りになりそうなのはどちら?”と訊いたのです。子供たちが選んだ人物はやはり71%が実際に選挙で当選していました」

子供が外国人の候補者を見ても、「有能だ」と感じる何らかの知覚が存在しているというわけだ。

さらに米国大統領選挙の様々なデータを検討してみると……。

・1960年から2000年までの選挙では、「低音の声」の候補が100%勝利している
・1796年から2012年までの選挙では、「背の高い方」の候補が29勝17敗

という結果が残っている。

ことほどさように、「外見の力」は選挙結果に大きな意味を持つことがわかってきている。

だが、「有能そう」な印象が、当選後の「実際の有能さ」と一致するかどうかはなんとも言えない。現状、そうした関係を実証できた実験はないという。

わかっているのは、政治で成功するにはまず“その役目にふさわしく見えること”が重要だということなのだ。

実はハーテンステイン博士は、人間のわずかな外見の手がかりからいかに将来を見抜くか、というテーマを研究しており、上記の選挙についての将来予測も『卒アル写真で将来はわかる 予知の心理学』(文藝春秋刊:http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163901572)という彼の新刊で紹介されている。

発売以来様々なメディアで話題を呼んでいる同書には、上記の「選挙で勝つ候補者の顔」のみならず、「仕事で稼ぐ顔」「プレゼンが成功するスタイル」など、ビジネス関連のテーマも掲載されている。

いずれも外国での事例とはいえ、わずかな外見の手がかり(顔写真など)を統計的な切り口で検証した「科学的研究」ゆえ、「おお、確かにそうかもしれない」と合点がいく内容も多い。

また、「犯罪で殺されやすい顔」「離婚しやすい表情」といった内容は、クライアントや得意先などとの気の利いた雑談に使えるかもしれない。

(プレジデントオンライン編集部)

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