富裕層の教育は脱帝王学へ。最新トレンドは「幼稚園から海外」
プレジデントオンライン / 2015年3月12日 9時15分
金融危機以降、大きくは増えていない日本のお金持ち。だがその中身は変わった。富裕層研究の第一人者たちが彼らの素顔を明らかにする。
■スイス留学なら年間1000万円も
かつて商売とは夫婦や家族単位で手掛けるものだった。妻が経理を担当するなど、パートナーとして創業時から支えてきたケースもよく見られた。しかし最近の超富裕層の場合、ビジネスと生活とを分けて考える人が多いという。とくに2代目、3代目にはその傾向が強く、当主の妻や嫁たちは会社とは距離を置き、もっぱら家庭を切り盛りするのが一般的だ。したがって子どもの教育を主導するのも圧倒的に母親であり、その意味では一般家庭と変わらない。
ただし、大きく異なるのが予算規模。子どものために効果があると判断すれば、彼らは費用を気にせずあらゆることに挑戦する。たとえば英語や国際感覚を身につけさせるための海外留学。一般の感覚では大学や大学院を想像するが、超富裕層の場合は幼稚園から海外に行かせるケースもある。
「たとえばオーストラリアやカナダ、シンガポールといった英語圏の国に母と子で滞在して、現地の幼稚園に通わせます。もしその国の生活環境や教育が合わないと感じたら、国を変えて、また別の幼稚園へ行かせるという方もいらっしゃいます」(NRIの宮本弘之・上席コンサルタント)
全寮制の寄宿学校も人気である。ロゼ校などスイスの名門寄宿学校や英国のイートン校、ハロウ校といったパブリック・スクールが代表的だ。こういった学校へ進学させれば、世界に通用する教養や語学を身につけさせることができるうえ、クラスメートとの付き合いを通じ、各国の富裕層との交友が期待できるというメリットがある。
日本からの留学生が増えたため、最近ではスイス国内の寄宿学校11校が東京都内で合同説明会を開くようになっている。各校の年間の学費は400万~1000万円。日本でいう小学校から高校までの課程があり、日本人留学生は中学校からの入学者が多いという。
かつては富裕層といっても国内の私立学校やインターナショナル・スクールへ通わせる例が目立つくらいで、教育に関してはさほどのバリエーションがあるわけではなかった。しかし現在は、かなり選択肢が広がっている。
「世界に目を向けると、富裕層向けの教育サービスはたいへん多い。国際的な教育を受けることが将来の成功にどこまでつながるかはわかりませんが、これからは資産階層に応じて教育機会の格差が開いてくるかもしれません」と東京大学大学院経済学研究科の柳川範之教授はいう。
超富裕層の場合、学校教育だけではなく、仕事を通じた後継者教育も大きな意味を持っている。NRIの宮本氏によれば、次のような特色があるという。
「日本の場合、伝統的な大地主や財閥は、敗戦時の施策で力を弱められてしまいました。したがって現在の超富裕層は、戦後創業の人たちがたいへん多い。この人たちは『創業経験』を大事にしています。すると、子弟に事業を継がせるにしても、子会社をゼロから立ち上げさせるとか、海外事業を担当させるといった経験をまず積ませようとするのです」
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野村総合研究所 上席コンサルタント 宮本弘之(みやもと・ひろゆき)
東京工業大学大学院理工学研究科修了。金融コンサルティング部長。著書に『プライベートバンキング戦略』(米村氏との共著)などがある。
東京大学大学院 経済学研究科教授 柳川範之(やながわ・のりゆき)
東京大学大学院博士課程修了(博士号取得)。研究分野は金融契約、法と経済学。著書に『日本成長戦略 40歳定年制』などがある。
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(プレジデント編集部 面澤 淳市 武内正樹、永井 浩=撮影)
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