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富裕層が会いにくる老舗百貨店コンシェルジュの「包容」トーク

プレジデントオンライン / 2015年4月7日 12時15分

高島屋 大阪店 販売2部次長 コンシェルジュ 池末明子氏●1987年入社、プレタポルテの婦人服を担当。2002年、現在のコンシェルジュの前身である「ローズアテンダント」設置とともに配属。

営業とは、人と話すこと。だからこそ、ごく小さな会話力の差が成績を分ける。各営業のトップセールスにそのコツを聞いた。

今では広く知られるようになったコンシェルジュとは、個々の顧客の注文に沿った商品やサービスを提供する、いわば“御用聞き”だ。老舗百貨店・高島屋の大阪本店では、2002年から始まった(名称は当初と異なる)この個人サービス専門の職に女性6名が就く。電話やネットで日時を決めて来店した顧客を相手に、ファッション・雑貨のコーディネートを提案するのが彼女たちの主業務だ。

担当は外商部の得意先も含めた同社の上位顧客。富裕層が9割を占め、社長夫人などの女性客やその家族が中心となる。

「百貨店ならではのおもてなしをしつつ、ストレスなくお買い物をしていただくのが仕事です」――同店コンシェルジュの一人、池末(いけまつ)明子氏は言う。

「大事なのは、十人十色のお客様をよく知ること。お客様が気づいていない部分を、プロの眼で見て埋めていきます」

増床で格段に広くなった大阪店は、婦人服だけで3フロア。顧客が一人で歩いてファッション・雑貨をコーディネートするには限界がある。高齢者や車いすの顧客はなおさらだ。そこで顧客を知り、顔色や体形・色彩等によるコーディネートの専門知識を持ち、フロア全域を把握するコンシェルジュがお相手するわけだ。池末氏は顧客1組に3時間、長いときは4~5時間かける接客を月に約50件こなす。無論、その間の顧客との会話は不可欠である。

「最初はお客様も緊張されて、眼を見ると瞳孔が引き締まっているなと感じることも。そんなときにこちらが強烈な笑顔をつくっても逆効果。リラックスしていただくためにも、ゆっくりと、『何を仰っても受け止めますよ』『どうぞ、安心してお話しください』というソフトな雰囲気を声や体で醸しながら、信頼感を少しずつ蓄積していく、という感じです」

顧客は初めから心を開いてくれるわけではない。とりわけ富裕層の人々は警戒心も強い。ニコニコしすぎたり、きれいすぎる敬語を使うと、萎縮したり遠慮をする。挨拶や丁寧語は必須だが、時間が経つにつれて言い方を変え、相手が話をたくさんできるような状況をつくっていく。「言っていただける」ことが大事だ、と池末さんは言う。

「声を少し落としてゆっくりと、包み込むような感覚で接する。逆に、大阪のご商売をされている奥様のようにしゃきしゃきとご多忙な方は、フロアを歩きながらでもその方のペースで会話する。要は、その方にとって心地よいペースを探りつつ、こちら側が合わせて差し上げることが大事だと思います」

名刺入れとルイ・ヴィトンの手帳。ページを開いての撮影は、やはりNGだった。

同じ得意客でも、その日の体調や“モード”を敏感に察して対応を変える。売り手が言いたいことを言うのではなく、あくまで顧客に合わせてやり切る。言葉づかいも臨機応変、相手との距離感が微妙に変わるごとに、「左様でございますね」「そうなんですね」などと微調整してゆく。そうして顧客の忌憚ない要望を引き出す。

そのうえで、顧客のこだわりの品が店内にない場合は、丸井や大丸など他の百貨店が扱っていることを伝える場合もあるという。

「お客様ご本人も気づかなかったコーディネートをご提案できたときに、2度目のお電話やご依頼をいただいていると感じています」

顧客のどんな感情も受け止めようとする包容力と、専門知識に裏付けされた信頼の蓄積を持つ池末氏らの存在は、前向きになり始めた老舗百貨店の切り札となるに違いない。

(プレジデント編集部 西川 修一 浮田輝雄=撮影)

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