中学受験なし、安く高学歴をゲットするワザ
プレジデントオンライン / 2015年6月11日 9時15分
「中学受験なしでも、子どもの“稼ぐ力”は身に付けられる。むしろ受験する年齢は遅いほうがよい」というのが、『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶応大学に現役合格した話』がベストセラーになった青藍義塾塾長・坪田信貴氏の見解だ。
「親主導の勉強の進め方は、時に子どもの成長の“機会損失”を招きかねません。低年齢での受験ほど、『親がレールを敷く』ことになります。皮肉なことに、親がレールを敷けば敷くほど、子どもの自主性は育ちにくくなる。心理学的に言うと、親から言われて勉強をするのは『外的動機』(外からの影響で生まれる動機)のなせるわざです。すると『内的動機』(自発的な動機)は育ちにくくなります」
坪田氏は、「エスカレーター式に一流大学まで進学したが、就職活動の時期を迎え、途方に暮れる大学生」や、「親の顔色ばかりうかがい、自分の意見がない高校生」を多く目にしてきた。このような若者たちは「低年齢からのお受験成功組に多い」と明かす。
「決められたことをただやるという“受け身”の姿勢で“稼ぐ力”が付くかというと、首をひねらざるをえません」
一方、大学受験に向け、自主的に偏差値を上げていくことができる生徒の母親には、ある傾向が見られるという。
「子育て期の話を聞くと、『子どもをほったらかしてきた』と、皆さん異口同音におっしゃいます。共働き世帯であることも多いです」
「与えすぎない姿勢」が、結果的に自主性を育て、将来的には稼ぐ力の獲得につながるのかもしれない。
もちろん、お受験を経てブランド大学まで“純粋培養”された世界で過ごすことには、メリットもある。
「いわゆる高額所得者のお子さんは、公立校に通うと、持ち物のレベルや話の内容が周囲と合わないなど、いじめに遭う可能性が高くなるものです。そのような事態を避けるため、ブランド校に通うのは身を守る手段として賢明です。しかしそこまで収入が高いわけではない場合、低年齢から、あえて受験に挑む必要はないでしょう」
とはいえ「子どもにはよい学歴を」と願うのは、一般的な親心であるはずだ。お受験を経ずして“よい大学”に入る方法はあるのだろうか。
「コストパフォーマンスを考えると、高2の夏から短期集中型で、志望校の受験科目に特化して勉強するのが最も効率的です。お受験という“長期の投資”にこだわることはありません。お受験のムダにまつわる象徴的な話があります。それは、小学・中学受験の『算数』についてです。算数も数学も『同じ科目』と認識している大人が多いのですが、実は似て非なるもの。特に大学受験に必要な数学には、算数より極度に抽象化された思考が求められます。『算数ができる子』が、『数学ができる子』になるとは限りません」
FPの山口氏は、費用対効果の高い教育投資として早期の英語教育を挙げる。
「大きくなってからヒアリングを鍛えることは非常に難しいので、子どもの頃から、英語の音楽やDVDなどで耳を慣れさせることが重要。大学受験でもヒアリングの配分が高くなりつつあり、高い費用対効果が見込めます」
■隣の出費診断!
[A家]オール私立 vs [B家]中学から私立 vs [C家]オール公立
[A家]年間授業料200万円を12年間+新体操も……
……夫49歳/妻49歳/長女19歳/次女17歳/年収約1200万円
Aさんは、私立小に通う父娘の姿に憧れ、“パパ主導”で、長女に名門小学校を、次女に幼稚園を受験させた。長女は第2志望のA女子大附属の小学校に進学し、高校まで内部進学。次女は、名門B女子大附属の幼稚園から高校まで内部進学。2人は年間授業料がそれぞれ約100万円の小・中・高校時代を過ごしたことになる。また約12年間、新体操にも取り組んでおり、年間支出額は別途約120万円(2人計)だった。現在、長女は専門学校に通う。次女は高校2年生だが、将来の夢はなく「『しんどい仕事はしたくない』などと話しており、どうなることやら」とAさんは苦笑いする。
[B家]マイカー、マイホーム断念で子ども2人に中学受験
……夫40歳/妻40歳/長男12歳/次男9歳/年収約1000万円
長男が4年生の頃から、家族のレジャーも差し置き、受験に伴走してきたBさん。その甲斐あってか、第1希望に合格。中学受験のために3年間で約190万円を投入。次男の習い事も含めると、これから毎年200万円はかかる見込みだ(手取りの約25%相当)。マイホームやマイカーは潔く断念した。受験までの3年間を、Bさんは「曇り空のような心境」と形容する。土日返上で勉強を見たり、3カ月ごとの模試の結果に一喜一憂したり、「受験生の親は財力だけでなく、体力と精神力も必要」と断言。「落ちていたらシャレにならなかった」と真顔で語る。次男の中学受験も数年後に控える。
[C家]「部活」と「自宅学習」でのびのび子育て
……夫49歳/妻44歳/長男14歳/長女12歳/年収約700万円(妻100万円)
2人の子どもを公立校で育ててきたCさん。将来は「国公立大に進学してほしい」と願っているが、「できる限り子どもの夢に添いたい」と学資保険として月4万円を積み立て中だ。教育費は長男の塾代が月に2万3000円。あとは教材費などが、2人合計で約年20万円である。長男は中学の野球部で活躍、長女は管弦楽部に入部した。「子どもには手をかけてきた」とCさん。長男の少年野球の練習に毎週末付き合い、SE職で理数系に強いため、子どもたちの勉強もよく見てきた。彼が子どもたちに望むのは「他人様に迷惑をかけない大人に育ってほしい」ということだけだ。
■FP山口京子さんの結論●中学受験には月10万円の余裕資金が必須
この3人の教育費を計算すると、Aさんの場合、私立幼稚園から私立大学(文系)に進学したと仮定して、子ども2人で4331万円(長女は専門学校進学、330万円と仮定)。Bさんの場合、私立中学から私立大学(文系、約300万円)に進学したと仮定して、子ども2人で2242万円。Cさんの場合、公立中学から、国公立大学に進学したと仮定して、子ども2人で847万円となります。
年収1000万未満で幼稚園からオール私立はあまり現実的ではないですが、中学受験を目指す場合、目安として月に10万円、自由になるお金があるなら、問題ないでしょう。ただし、私立の場合、お母さん同士のお付き合いに予想外にお金がかかることも。偏差値のみならず、学校のカラーを見て進学先を決めることも大切です。
子どもが生まれたら毎月の児童手当分、1万5000円くらいは貯めておきたいものです。大学入学の頃には300万円台になるはず。教育ローンや奨学金もありますが、子どもの負担となるので避けたほうが賢明です。
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名古屋市生まれ。フリーアナウンサーから上京を機にFPに転身。テレビ、ラジオ、雑誌などで活躍。著書に『5ステップで貯まらん人を脱出 FP山口京子式 家計簿いらずの貯まるお財布メソッド』『「そろそろお金のこと真剣に考えなきゃ」と思ったら読む本』など。
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(山守 麻衣 向井渉=撮影)
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